プロチームとしてどういう選手になりたいか? そのためには何をしなければならないか?
目標に掲げたプレーオフ進出へあと一歩届かず、東京羽田ヴィッキーズの今シーズンは早々に終了を迎えた。互いにコロナ陽性者が出たことで、アイシン ウィングス戦は不成立となり勝ち点を得られず。もしアイシン戦に2連勝し、最終戦も2連勝できていれば、プレーオフ進出の望みは残っていた。しかし、勝負に“タラレバ”はなく、不成立が決まった時点でプレーオフ進出も潰えてしまった。
日立ハイテク クーガーズ戦へ向け、副キャプテンの鷹のはし公歌は「コロナ感染者が出てしまったことで、コンディションとしては良い状況ではなかったです。また、プレーオフに行けないことが決まり、これが最後のゲームになることも分かっていました。それでも、『全員で笑って終わろう』と話してこの試合に臨みました」とモチベーションを高める。初戦は70-62で勝利したが、続く2戦目は52-79でリベンジされ、最終戦を飾ることはできなかった。しかし、「最後までコートもベンチも諦めないで、笑顔で戦い切ることはできたと思います」と鷹のはしが言うように、全てを出し尽くした。
萩原美樹子ヘッドコーチと佐藤謙介アシスタントコーチを迎え、新体制となった今シーズン。6勝16敗で終えた戦績に対し、「これまでとあまり順位としては変わらず、下から数えた方が早いのはまだまだなところです」という萩原ヘッドコーチにとっても、指揮官としてWリーグのシーズンを走り抜けたのは、はじめての経験だった。
「選手との信頼関係を結んでいくことに終始した1シーズンでした。振り返れば、選手たちにはメンタリティーについての話ばかりをしていた感じがします。プロチームとしてどういう選手になりたいか、そのためには何をしなければならないか、など最後まで説き続けてきたシーズンでした。どれくらい響いてくれたかは分からないですが、選手自身が考えられるメンタリティーを身につけて欲しいと思っていましたし、そういうチーム作りをしてきました」
メンタリティーとともに、全てのシステムを1から構築し直した。トランジションバスケや全員でリバウンドに飛び込むなど、小さいチームが勝利を得るためには細部から突き詰めていかねばならない。鷹のはしは「難しく考えず、できないことはコーチ陣に聞きながら、とにかくチャレンジをしていこうというシーズンになりました。選手同士でもどうすれば良くなるかなどについて、これまで以上にコミュニケーションを取ってきました。うまく行かないときもありましたが、昨シーズンよりも成長した自分たちの姿を出すことはできたと、今シーズンが終わってみて今は思います」と前向きな変化を実感する。特にメンタリティーの部分では、「チームとして負けていたり、なかなか点数が入らないときに、これまでは勝利へ向かっていないこともありました。でも、今シーズンはいくら負けていても、自分たちが練習してきたことや準備してきたことを最後まで貫き通そうというマインドで、どの試合も臨むことはできていたと思っています」と述べ、萩原ヘッドコーチが蒔いてきた種はしっかりと芽を出しはじめている。
最後の試合も大差をつけられたが、コート上の選手たちはしっかりとハドルを組み、ベンチメンバーも声をかけ合い、最後まで諦めることなく戦う姿に温かい拍手が送られた。敗れはしたが、「全員がひとつになって戦うことができた試合になりました」と今シーズンの集大成を見せることはできた。