「スクリーンをかけたり、地味なところで貢献できればそれで良い」
モンデーロヘッドコーチはタイムシェアし、どんどん選手を入れ替えるスタイルである。バックアップとしての役割に徹する河村の存在により、2年目のシラ ソハナ ファトー ジャが花開きはじめている。
「オフェンスや高さの面でチームに貢献してくれているソハナですが、まだディフェンスのローテーションなどチームルールが完全に理解できていないところがあります。そこを自分がフォローしながら、全員で40分間戦えれば良いと思っています。ソハナはもうコートに出たら思いっきりプレーするだけで良いので、その埋め合わせではないですが、うまくバランスを取っていけるように今シーズンは意識しています」
ソハナとともに、山本麻衣や馬瓜ステファニーなど若き戦力が今のトヨタ自動車を引っ張っている。攻撃的な彼女らの持ち味を活かすためにも、「リバウンドのフォローに入ったり、違う部分のプレーで支えています。(馬瓜)エブリンも含めて、下の子たちには遠慮してプレーして欲しくはない」とは、頼もしいキャプテンである。「スクリーンをかけたり、地味なところで貢献できればそれで良い」と言うように、泥にまみれてもなお清々しいプレーでチームを支えていた。
16勝2敗で6位(3月6日現在)のままのトヨタ自動車だが、残るは代々木第二体育館で行われる7位の三菱電機コアラーズ(3月12日・13日)と、11位のアイシン ウィングス(3月19日・20日)の4試合。上位争いのライバルたちを見れば、1位 デンソー vs 2位 富士通は最終戦で直接対決、4位のENEOSサンフラワーズも今週末はデンソーと対戦し、必ずいずれかに黒星がつく。勝つことが前提となるが、その隙を縫うようにスルリとディフェンディングチャンピオンが抜け出す可能性は高い。
河村のコートネームは「タク」だが、Wリーグにおけるこの名はENEOSの渡嘉敷来夢として知られているだろう。3つ下の河村は入れ替わりで、渡嘉敷と同じ名門・桜花学園に入学してきた。「みんなの前で『逞しくなります』と自己紹介したときに、先輩たちが出してくれたコートネームの候補にその言葉から取った『タク』があったので、それに決めました」というのが由来である。時を同じくして、ENEOSに進んだ渡嘉敷も、高校の時とは違うコートネームを拝命したのが「タク」だった。同じく逞しさが由来となるのも、運命的なものを感じる。だが、コートネームがかぶってしまったことを知った高校生の河村は、「ヤベぇ〜、やっちまったぁ〜」と焦ったそうだ。だが、その名を変えることなく逞しさを貫き、2連覇を支えるキャプテンとして存在感を放っている。
文 泉誠一
写真 W LEAGUE・トヨタ自動車アンテロープス