成功のカギは「得点を取る意識」
今年1月、富士通のBT・テーブスヘッドコーチのもとへ、オファーに関する一報が届いた。ワシントンのゼネラルマネージャーも兼務するマイク・ティボーヘッドコーチは、「世界で最もダイナミックなポイントガードであり、我々のスタイルに合っている」と町田を評価する。その町田に対する役割について、「まずベテランポイントガード(ナターシャ・クラウド/ワシントンひと筋6シーズンを過ごし、昨シーズンのアシスト6.4本はリーグ2位)のバックアップ。ボールプッシュやトランジションがメインになる」とテーブスヘッドコーチは明かし、同じ内容をティボーヘッドコーチもチームのオフィシャルサイトで公言している。テーブスヘッドコーチは加えて、「得点を取る意識がないと、たぶん成功しない」とはなむけの言葉を添えた。
町田がはじめて世界の舞台に立ったのは、2011年のU19ワールドカップである。奇しくも東京オリンピックの10年前に行われた19歳以下の世界大会であり、そのときも平均6.2本でアシスト王に輝いた。それ以上に驚かされたのが、世界を相手に次々とゴールを奪っていった得点力である。9試合中6試合で二桁得点を挙げ、平均12.3点。平均15点の本川紗奈生(デンソーアイリス)、トップの平均16.9点を挙げた高田汐織氏(日立ハイテク クーガーズ:アシスタントコーチ)とともに、札幌山の手高校出身トリオが稼ぎ頭となって7位入賞を果たす。イタリア戦とオーストラリア戦では22点を記録している。
得点センスが高い町田だが、まわりに得点力ある選手が多いことで必然的にパスが先行してしまう。東京オリンピックの選手選考時、得点に消極的な町田のプレーに対し、女子日本代表のトム・ホーバスヘッドコーチ(現男子日本代表ヘッドコーチ)は4人のポイントガードの中で4番目の評価をしていたことは、現在販売中の女子日本代表関連書籍にも明言されている。最終メンバーに残れたこと、準決勝のフランス戦で18アシストのオリンピック新記録を樹立したことも、積極的にゴールへ向かって行ったからこそである。
町田瑠唯が切り拓くWNBAの道への期待感
コート上の町田は電光石火のスピードで相手を抜き去り、大胆なパスを通し、ゲームを支配する。一方で、コートを離れれば、どちらかと言えば控えめなタイプ。富士通の中で一番低い162cmは、一般女子の平均身長157cmと遜色ない。英語も「得意ではないので勉強中」であり、そもそも「すごい海外への挑戦したい気持ちがあったかといえばそうではなかった」。そんな町田がWNBAへ行くことを決めた。
「本当にオファーがもらえるとは思っていなかったので、とても驚きました。でも、話を聞いているうちにすごくワクワクして、挑戦したいという強い気持ちになりました。チャンスがあるならばやらない選択肢はないと思って決断しました」
ホーバスヘッドコーチは常にメンタルタフネスを説き、勝つことによって自信を深めていったことも少なからず影響している。「東京オリンピックで銀メダルを獲得し、そのおかげで声をかけてもらえたと思っています。日本代表メンバーにも、サポートしてくれた方々にも感謝しています」という町田には、ぜひとも富士通を優勝へと導き、日本一の称号とともにWNBAへ乗り込んでもらいたい。