アランマーレにはもう1人、この大田区総合体育館での試合を心待ちにしていた選手がいる。2学年下の弟・幸太郎がB2・アースフレンズ東京Zでプレーしている久岡真歩子だ。弟の試合はよくチェックしているらしく、試合前日には自身のツイッターで「私のホームと言ってもいいですかね?」と呟いていたが、そのコートに実際に立って「『良い会場でプレーしてるんだなぁ』と思いました(笑)」と羨ましそうな様子だった。
下の弟・賢太郎も前橋育英高(群馬)のキャプテンとして年末のウインターカップに出場したばかり。弟2人の活躍は発奮材料になっているようで、「お姉ちゃんらしく頑張らなきゃ(笑)」と冗談めかして語りつつ、特に一足早くプロの舞台に立った幸太郎に関しては「私よりもチームへの還元力がある。キャプテンもやっているし、見習いたい部分は多いです」と良い目標にもなっているとのことだ。
その久岡は、現在のチーム状況について「一つのことに全員が向かっている実感もあって、少しずつ上がってきているとは思うんですけど、他のチームと比べるとまだまだなところがかなり多い。成長率をもっと伸ばしていかなきゃいけないです」と危機感もにじませる。そんな中で「ウィン(平松)はいつもポジティブな言葉をかけてくれる。支えられているなと思います」と、Wリーグの舞台を経験している平松の存在の大きさも実感。同い年の2人は連れ立って食事などに出かけることもよくあるそうだが、「なんだかんだバスケの話になっちゃいますね」(平松)と高い意識を携えてバスケと向き合っている。
アランマーレが拠点としている秋田県は、能代工業高(現・能代科学技術高)やB1・秋田ノーザンハピネッツを抱えるバスケ王国。そんな土地からWリーグに参戦している以上、注目されるのは必然とも言える。その点でも平松は「露出が増えてきて、そこはどんどんアピールしていける場だと思っています。自分はキャプテンだからそういう機会も多いんですけど、もっといろんな選手が発信していけたらと思うので、見られている立場だということは周りにも言っています」とリーダーシップを発揮。久岡も「バスケに対して熱いがゆえに、厳しく見られることもある。イベントなどを一生懸命やるのはもちろんなんですけど、応援されるチームになるためにはやっぱり試合で勝っていくことが、ファンへの一番の還元だと思います」と、秋田のバスケ熱をモチベーションに変えたい想いを抱く。
2人にとって特別な意味のあった大田での2試合は残念ながら連敗に終わったが、その翌週は今シーズン最後のホームゲーム。しかも、その相手が東京羽田ということで、平松は「ホームゲームができるのも嬉しいし、その相手がヴィッキーズなのですごく楽しみです」とかつてのチームメートたちを迎え撃つ喜びをのぞかせた。平松と久岡が引っ張るアランマーレが秋田の地で、そしてWリーグという最高峰の舞台で存在感を示すことができるか。今シーズン最後のホームゲームに、その意欲が強く表れることを望みたい。
文 吉川哲彦
写真 W LEAGUE