東京オリンピックで銀メダルを獲得した女子日本代表のうち、企業チーム所属でなかった唯一の選手が東京羽田ヴィッキーズの本橋菜子。クラブが初めて輩出した日本代表選手であり、必然的にチームの絶対的エースとして不可欠な存在となっていることは今更言うまでもないだろう。
ただ、昨シーズン中に負った大ケガの影響が未だ残り、今シーズンは開幕から一貫してベンチスタートとなっている。この経緯については先日掲載された本橋に関する記事に本人と萩原美樹子ヘッドコーチのコメントが載っており、そちらをぜひご参照いただきたい。
そんな本橋に代わってポイントガードのスターターを任されているのが、入団2シーズン目の軸丸ひかるだ。昨シーズンは終盤に体調不良に見舞われるなど不完全燃焼のルーキーイヤーを過ごしたが、学生時代の実績は申し分ない。聖カタリナ女子高では2年次にインターハイとウインターカップで3位となり、3年次のウインターカップではベスト5に選出。進学した白鷗大では、自身はケガで欠場を余儀なくされたが1年次にインカレ優勝を経験し、4年次も優秀選手に選ばれる活躍でインカレ準優勝に貢献している。当然ながら周囲の期待は大きかった。
とはいえ、アジアカップMVPにも輝いた実績を持つ本橋に代わるとなれば、プレッシャーも少なからずあったに違いない……と思いきや、当の本人からは「全く感じてなかったです」という答えが返ってきた。大学まで文字通りチームの軸としてプレーしてきた選手として「昨シーズンは控えの難しさを感じました。スタートで出るほうが自分には合っているというか、気持ち的には楽です」という慣れの部分に加え、今の状況を前向きに受け止めるメンタルの強さが軸丸にはある。
「ナコさん(本橋)がケガしたときから『自分がやらなきゃ』という想いがありました。ナコさんはやっぱりみんなが信頼を置いていて、チームの柱という感じがするんですけど、ナコさんがいないから試合が不安定になるのではなく、ガードの私がしっかり組み立てられるように、良い経験だと思ってやっています」
もちろん、それですぐに結果が出るほど甘い世界ではない。「リーグ戦の入りの何試合かは自分でも『自分ってこんなに点が取れるんだ』と思うことも結構あって、自信になっていた」ものの、試合を重ねていくにつれて「最近はちょっと考えすぎなのか、ハマっていない部分がある」とWリーグのレベルの高さも痛感している。
「トップチームだと例えば戦術をきっちりやりきるとか、絶対的な何かが必要だと思うんですよ。でも、私たちは格上のチームを食っていかなきゃいけない立場で、考えすぎずにガーッといく思い切りの良さが大切なのかなって。自分も慎重になりすぎるタイプなので、もっと積極的にいかないと」