能代工高(現・能代科学技術高校)や故・小浜元孝監督が率いた秋田いすゞ、そして秋田ノーザンハピネッツが君臨するバスケ王国・秋田。しかし、そのいずれもが男子チームであり、王様ばかり。2016年に発足し、実業団大会で力をつけてきたアランマーレ秋田(プレステージインターナショナル アランマーレ)が、今シーズンのWリーグより新規参戦する。
チームを率いるのは、デンソーアイリスでその手腕を振るった小嶋裕二三ヘッドコーチ。秋田出身、2017年に秋田ノーザンハピネッツで現役を引退した高橋憲一アドバイザリーコーチがともにチームを支える。16名のフルロスターのうち#13中島萌奈美(山梨クィーンビーズ)、#37佐藤ひかる(日立ハイテク クーガーズ)、#23平松飛鳥(東京羽田ヴィッキーズ)、#12コナテ カディジャ(アイシンAWウイングス)とWリーグ経験者は4人。「17年ぶりに新しいチームがWリーグに参入するということで、その歴史に携わるために移籍しました」という佐藤は、秋田県民に応援してもらえるチームを目指す。
9月3日(金)に開幕したオータムカップ 2021 in 高崎で、そのベールを脱いだアランマーレ。有観客で行われ、「お客さんの前で試合ができる喜びをもう一度味わえたのが良かったです」という佐藤だが、その一方で「すごく緊張しました」とは他の選手も声を揃える。平松も「自分のプレーが上手くできなかったことが多かったです」と言うように、序盤からトヨタ紡織サンシャインラビッツに引き離されていった。
平均168.4cmのアランマーレは、マッチアップするいずれもが身長差で劣る。世界の強豪に立ち向かって行った女子日本代表の姿を重ねながら、その試合を見ていた。銀メダルに輝き、歴史的な結果を残したが、それまでを振り返れば厳しい試合も強いられてきた。小よく大を制する戦いをオリンピックの大舞台で証明し、アランマーレのような小さなチームこそ勇気をもらって奮起しなければならない。
初戦は50-79、29点差の大敗を喫したが、ここからがはじまりであり、現在地を知るきっかけとなった。惜しむべきは、Wリーグチームとの対戦がこのトヨタ紡織戦のみで終わってしまったことだ。負けても試合が続いたオータムカップではあったが、2戦目は鶴屋百貨店(81-45)、最終日は来シーズンより参入が決まっている姫路イーグレッツ(77-49)と実業団チームとの対戦となった。それぞれ快勝し、Wリーグチームとしての差を見せつけたことを自信に持ち、開幕へ向けてワンランクレベルアップした姿を見せて欲しい。
キャプテンの平松は、「ボールムーヴメントからノーマークやズレを作ってからアタックし、3ポイントシュートやノーマークシュートまで行くことができていたのが自分たちの持ち味です」と述べ、トヨタ紡織戦を通じてその手応えを感じることもできた。平松自身は東京羽田で試合経験はあるが、アランマーレとしてWリーグのチームと肌を合わせ、「やっぱり高さや身体の強さの違いはすごく感じました。ミスマッチのところをいかに全員で協力して守るか。それは、今後どのチームに対しても課題になります」と続け、10月23日(土)にホームの増田体育館で開幕を迎えるアイシンウィングス戦までに突き詰めて行くだけである。
「もちろん結果を求めて戦いますが、アランマーレのバスケットをどの相手に対しても徹底していく部分を見てもらいたいです。今シーズンは特にそれができるかできないかで、自分たちの土台が作られるとも思っていますので、しっかりチームを引っ張っていきたいです」(平松キャプテン)
文 泉誠一
写真提供 W LEAGUE