もしも ── バスケが芸術点のようなパフォーマンスで評価するスポーツだったら、結果は変わっていたかもしれない。それほど拮抗したWリーグ プレーオフ・セミファイナル第2戦だった。トヨタ自動車アンテロープス(西地区1位)vs富士通レッドウェーブ(東地区2位)、ENEOSサンフラワーズ(東地区1位)vsデンソーアイリス(西地区2位)はいずれも1ゴール差の大接戦となる。第1戦に続き、東西1位の両チームが勝利し、スウィープ(連勝)でファイナル進出を決めた。お互いに4日間の準備期間を有効活用し、3月20日(土)18時より代々木第二体育館にてはじまる3戦2戦勝方式のファイナルへ向かう。
誰かがダメでも次の人が攻められるチーム力
「第1クォーターに良いディフェンスとリバウンドさえできれば大丈夫だ」と富士通のBTテーブスヘッドコーチは発破をかけ、リベンジのコートに選手を送り出した。リバウンド数はトヨタ自動車15本に対し、富士通は9本と数字上では差がついたが、プレー自体は互角の戦いを見せる。前半は29-29の同点で終えた。
勝負の後半、トヨタ自動車は長岡萌映子や安間志織が3ポイントシュートを沈め、41-33とリードを広げる。富士通はディフェンスから立て直し、篠崎澪の気迫あふれるプレーで追い上げる。第4クォーター残り33.7秒、篠崎らしいドライブから倒れ込みながらバスケットカウントをねじ込み、58-59と1点差に迫る。トヨタ自動車は次のプレーで安間が冷静にシュートを決め、3点差に引き離す。残り時間は16.5秒。タイムアウトが残ってはいなかったが、3ポイントシュートが武器である富士通にとっては十分に逆転できる時間だった。
ボールを持つ町田瑠唯に対し、オコエ桃仁花がスクリーンをかけながら、相手のディフェンスを剥がしていく。ポップしたオコエに一瞬の隙が生まれた。躊躇なく3ポイントシュートを放つ。しかし、長岡が必死で伸ばした右手が触れたことで、ボールはゴールに届かず、61-58で幕切れとなった。
初戦は馬瓜エブリンの20点を筆頭に、山本麻衣(12点)、馬瓜ステファニー(10点)が二桁得点を挙げた。2戦目は長岡が16点、安間が15点で勝利に導く。「私も珍しく得点を取れましたが、誰かがダメでも私たちはボール回して絶対に次の人が攻められる」と安間が言えば、長岡も「一人ひとりの責任を持ったプレーや、どこが攻められるかという1on1の意識がこのような結果になったと思う」という強みを生かし、接戦を制した。チーム力で勝ったトヨタ自動車は勢いそのままに、未知なる頂点へ挑む。
悪い流れを断ち切る「ものすごく良いつなぎ役」
第1戦同様、ENEOS vs デンソーはシーソーゲームが続いた。宮崎早織がブザービーターで3ポイントシュートを沈め、37-35とENEOSがリードして前半を折り返す。「リードを奪えたことでデンソーも焦っていた」と梅嵜英毅ヘッドコーチが言う第3クォーターに58-50と抜け出したことで、ENEOSが流れをつかむ。ベンチメンバーの石原愛子が前日に続き、流れが悪い場面を断ち切る活躍を見せる。「レギュラーシーズン終盤からものすごく良いつなぎ役をしてくれている」と梅嵜ヘッドコーチも評価し、僅差ながら後半はENEOSがリードをキープしていた。