経験は生かしてこそだと言われる。
結果として連敗を喫することになるENEOS戦の前夜、谷村はチームの強さをこう語っていた。
「スタートの5人全員がいずれも得点力があるんです。この人はパスだけだからちょっと下がって守ろうというのがなくて、5人全員がいつでもドライブに行けるし、シュートが打てる。それが今年のハイテクの強さだと思います。途中から入ってくる星(香那恵)や白鞘(郁里)たちも活躍してくれます。そういう意味ですごく安心感があるんです。もちろん試合によって好不調はあるけど、それをカバーする選手もいるので、悪い流れが続くこともない。層の厚さをすごく感じているところです」
シャンソン化粧品時代はチームメイトに頼るより、どこかで「自分がやらなければ」という気持ちが上回っていた。もちろんその責任感がリーグを代表する選手へと引き上げたのだが、新天地で新鮮な感覚を得た今、谷村はそれを素直に喜んでいる。自分がダメなときはチームメイトがやってくれる。だからチームメイトが苦しんでいるときは自分がしっかり結果を残そう。そうした相乗効果が日立ハイテクの好調ぶりを引き出しているというわけだ。
責任を背負ったからこそわかることがある。
過去の自分があって、今の自分がある。
谷村里佳はシャンソン化粧品で丁氏に教わった4年間を生かす環境を自ら選び取った。
ひとつのところに留まっていてはわからないこともある。
文・写真 三上太
画像 バスケットボールスピリッツ