10月27日からタイ・バンコクで「第25回FIBAアジア女子バスケットボール選手権大会(以下、アジア選手権)」が開催される。この大会は来年9月末に開幕する「第17回FIBA女子バスケットボール世界選手権大会」の予選も兼ねていて、上位3位までに入れば世界選手権の出場権を得られる。
アジア選手権を直前に控えて、ヘッドコーチ、選手たちは何を思っているのか。内海知秀ヘッドコーチと、現時点でスタメンが予想される5人の選手にチームの現状や意気込みなどを聞いてみた。まずは第2期の体制を敷いて2年目となった内海ヘッドコーチから。
――東アジア競技大会(10月9日~14日@天津)では中国に競り勝ったものの、翌日チャイニーズ・タイペイ(以下、タイペイ)に負けました。この2戦を振り返っていただけますか?
内海 前半の合宿ではケガで離脱していた間宮(佑圭・JX-ENEOSサンフラワーズ)が合流して初めてのゲームで、アジア選手権に向かう前に全員でゲームを共有できたことは非常によかったと思います。中国に関しては若手のチームでしたが、高さもあり、高さに対する経験ができたのはよかったですね。結果としても競り合う中で勝ったことはよかったのですが、ただ次のタイペイ戦も含めて、得点が伸びなかった。その理由の1つにターンオーバーがあって、20本近いターンオーバーを犯している。これは早急に直していかなければいけない点です。アジア選手権の予選ラウンドを戦っていく中でその数を減らしていきながら、ペースを上げていけたらなと思っています。敗れたタイペイ戦ではローポストでのフォワードの1対1をやられたところがありました。アジア選手権でもそこを突いてくると思いますので、それに対するディフェンスは考えたいと思います。本当はそんなゲームでも勝たなければいけなかったと思うのですが。
――あくまでも今年度のターゲットはアジア選手権なわけで、その過程の中の大会だったので万全ではなかったとも言えますか?
内海 我々がやってきたことのすべてを東アジア競技大会に出す必要はなかったので、オフェンスは2つくらいのパターンを使いましょう、ディフェンスはマンツーマンだけで守りましょうという形にしたのは事実です。さまざまな戦術を使っていれば、結果も変わっていたかもしれませんが、東アジア競技大会に関しては2つのオフェンスで攻め切れるのか、マンツーマンだけでどこまで守れるのかをやったつもりです。
――ターンオーバーが多い原因は何でしょう?
内海 まだパッサーとレシーバーのタイミングがあっていないように見えます。特にインサイドの選手があまりにもすべての場面で頑張りすぎている。つまりは駆け引きがないということですね。すべての場面で頑張ってしまうので、アウトサイドのパッサーもどのタイミングで入れていいのか、はっきりしない。ここぞというときに頑張って、そこでパスがタイミングよく入るようになればいいのかなと感じます。
――それは修正可能な範疇ですか?
内海 大丈夫でしょう。もちろん大会前にも修正していきますし、予選ラウンドの中でも少しずつ修正して、決勝ラウンドではしっかりと戦いたいと思っています。
――ターンオーバーが多いと、速攻で走れるところでも走れていないようです。
内海 ターンオーバーも多いし、決めるべきシュートを決めきれていないのも、リズムよくバスケットができない理由だと思っています。シューターの宮元(美智子・三菱電機コアラーズ)が昨日くらいからシュートが入っていないのですが、やはりアウトサイドシュートが入ってこないと、インサイドだけ得点を取ろうというのでは厳しい。
――対戦スケジュールを見て、戦うポイントなどは見えてきましたか?
内海 今回は思っていたよりもいいスケジュールなのかなと思っています。初戦のカザフスタンは、これまでレベル2だったから見ていないんだけど、大きさのあるチームです。2メートルの選手や195cmの選手がいる(※190cmを越える選手が4人おり、 平均身長186cm。日本の平均177cmより約10cm高いチーム)。ですから、そんなに楽勝にというわけにはいかないと思います。もちろん見ていないので何とも言えませんが、背の大きい選手がいるので、決めるべきシュートを決めていかないと、リバウンドを取られてしまうとややこしくなる。その意味でも初戦からしっかりやっていきたいと思います。ただやはりポイントは2試合目のタイペイ戦、続く3試合目の韓国戦、そこでちゃんと戦えるかどうかでしょう。その2試合で調子が上向けばいいなと思っています。中国戦は予選ラウンドの最後で、初日に中国と韓国が対戦するので、情報を得るにもいいスケジュールだと思います。
――タイペイは、東アジア競技大会とは同じメンバーではないと思いますが、一度後手を踏んでいる相手だけに落とせないところです。
内海 東アジア競技大会で負けた分、選手たちも今度は負けられないと頑張ってくれると思います。昨日、今日とタイペイ戦を想定した練習もやってきましたし、勢いづけるための試合にしたいと思います
――国際大会では常にリバウンドが日本の課題になっていますが、東アジア競技大会を通じてその点はどう感じていますか?
内海 リバウンドに関しては王(朝新喜・三菱電機コアラーズ)と渡嘉敷(来夢・JX-ENEOSサンフラワーズ)のところで、今までよりはクリアされているように思います。東アジア競技大会では高さのある中国とやっても本数が同じでしたし、タイペイのときも、本来であれば勝たなければいけないところですが、同じ本数でした。だからリバウンドでまったく勝てない、30-10とか、30-20という感じではないと思っています。ただ彼女たちがファウルトラブルになると怖いところではありますが。それでも間宮が戻ってきてくれたことで、インサイドの層はリバウンドに限らず、オフェンスでも厚くなったと思います。
――では最後にアジア選手権での目標を聞かせてください。
内海 世界選手権の出場権を取るのは最低限の目標ですので、それはなんとしても取らなければいけないと思っています。それプラス、ファイナルに進出して、ファンのみなさんが期待しているような結果を出したいと思っています。
女子日本代表がアジア選手権でファイナルの舞台に立ったのは2004年、仙台でおこなわれたアテネオリンピックの予選を兼ねた大会のときまでさかのぼる。そのときチームを率いていたのが内海ヘッドコーチである。あれから9年。内海ヘッドコーチは再び日本をファイナルのコートに引き上げることができるのか。ヘッドコーチの采配にも注目したいアジア選手権である。
女子日本代表のアジア選手権・予選ラウンド対戦スケジュール
10月27日(日)14:00〜 対カザフスタン
10月28日(月)20:00〜 対チャイニーズ・タイペイ
10月29日(火)20:00〜 対韓国
10月30日(水)16:00〜 対インド
10月31日(木)16:00〜 対中国
11月2日(土)準決勝
11月3日(日)決勝
*すべてタイ時間。日本との時差:マイナス2時間。例)日本22時=タイ20時
JBA:第25回FIBA ASIA女子バスケットボール選手権大会特設サイト
FIBA ASIA:第25回FIBA ASIA女子バスケットボール選手権大会サイト(英語)
フジテレビNEXT:TV放送スケジュール
文・三上 太