「それってワクワクしないですよね。『はい、そこで面を取るよね』『はい、そこでシュートだよね』って感じ。つまらないじゃないですか。JX-ENEOSを例にすれば、それで11連覇してきたのかもしれないけど、そこに何かワクワクするような、『え、そこに行くの?』みたいな感覚があったら、もっといろんな引き出しが生まれると思うんです。自分がその起点になりたいと思っていたし、自分をそういう選手としてうまく利用してほしかった。もちろんセオリーをないがしろにするつもりはありません。ただセオリーだけで勝っても、それ以上のひろがりは期待できないのかなって……。今振り返れば、自分はやっぱり下剋上を目指して、チームメイトと一緒にバスケットの幅を広げていくようなチームスタイルがよかったのかなって思うんです」
すべてを自分の考えどおりにすべきだと言うのではない。それが絶対に正しいことだとも思っていない。藤岡自身のプレーや考え方にもまだ甘いところはある。一方で他のチームメイトにもそれぞれが育ってきた過程のなかで、それぞれが紡ぎあげてきたバスケットに対する考え方がある。藤岡としてはそうした異なる考え方をぶつけ合いながら、それぞれの考えに磨きをかけたり、新しい何かを生み出したかった。自らの意志で選んだチームで、チームが強くなり続けるための化学反応を引き起こしたかった。
「先輩・後輩のある学生時代から縦のつながりも、横のつながりも大事にしてきました。それぞれのカテゴリーで最終的に結果を残してきたけど、それだって最終学年で結果を残しているだけで、それ以前は全部負けているんです。自分はそうした負けから学んできたと思っています。負けて、次はこうしなければいけない、こうしていこうってみんなで話し合ったし、自分もどうしたらいいのかを考えました。結果ももちろん大事なんだけど、自分にとってはその過程をすごく大事にしてきたんです」
その考え方はこれから先、指導者になってからも変えるつもりはない。目標を見据えつつ、それでも結果に捉われず、そこに至る過程こそがその後の人生に役立つと伝えていきたい。表面上の結果だけではなく、その過程で人間力は育まれていく。濃密な過程があれば次のステージで成長できる可能性があることを伝えていきたい。
「自分自身がそう考えてきたからこそ、JX-ENEOSで自分の考え方とは違う考え方に触れたとき、本当に苦しかったけど、また新しい自分に出会えて、それを糧に次のステップに踏み出せるんです」
そしてこう力強く続ける。
「藤岡麻菜美は絶対にそこだと思っています」
part3「新たな挑戦を次世代の子らとともに」へ続く
※JX-ENEOSサンフラワーズは2020-21シーズンより「ENEOSサンフラワーズ」に名称変更をしたが、本記事は改称前の「JX-ENEOSサンフラワーズ」で統一します。
文・写真 三上太