吉田のそうした姿はWリーグで対戦しているときから感じていた。さらに昨年、女子日本代表で初めて一緒にプレーしたことで、その思いに拍車がかかった。
「私が今、吉田さんのようなプレーをしようとしてもできないと思います。もちろん私はそれを求められていないので、私は私のプレースタイルをやっていこうと思うんですけど、それが私の理想形かと言われたら、私の個人的な思いとしては、もう少し余裕を持ったプレーができたらいいなと思っています」
ポイントガードとして日本代表と東京羽田という2つのチームを掛け持ちすることはけっして容易なことではない。どちらのチームもトランジションの速いバスケットをスタイルに掲げているが、個人として攻めるポイントは変えなければならない。体力もさることながら、そうした頭の切り替えも必要になってくる。
「世界に出て、日本のバスケットをやるうえで身長が不利になることは当然あります。ポイントガードでもそうです。でも逆に言えば、身長が小さい分、スピードが生きやすく、アウトサイドからの仕掛けはすごくしやすいんです。むしろそれをしなければいけない。そこが日本の強みだなって思うんです。ただ日本に帰ってくると、それが厳しくなります。相手も同じ身長で、同じようなスピードがあって、脚力もある。そうした難しさは感じますね」
国際大会でのアドバンテージが、必ずしも国内でもアドバンテージになるとは限らない。それでも国内において、世界で通用するようなプレーをして結果を出さなければ、日本代表に呼ばれることはない。
ジレンマである。
初めて出場した2018年のワールドカップではほぼノーマークだった本橋が、2019年のアジアカップ、プレOQTと大会を重ねるにつれて、簡単にボールを持たせてもらえなくなった。持ってもプレッシャーが厳しくなり、なかなか自分のプレーが出せない。それはそうだろう。対戦するのはそれぞれの国を代表するチームであり、トップクラスの選手たちだ。何度も同じ轍を踏まないよう、さまざまな対応をしてくる。その対応をさらに上回っていかなければ、世界とは対抗できない。本橋もそのことは十分に心得ている。
「たぶんこれまでどおりにうまくはいかないと思います。絶対に守られてくると思うので、それ以上の進化をしなければいけないなって思っています」
part3「ポイントガードの手腕にかかるセットプレー」に続く
文 三上太
写真 安井麻実