若いころの吉田は、今と同じような勝負への厳しさを追求しながらも、どこかに甘さが見え隠れしていた。しかし年齢を重ね、勝つことへの本当の難しさを経験として積んだことで、その甘さが抜け、自らにも厳しい目を向けられるようになってきた。
「誰かに何かを言われたときに納得できなかったら話の内容は入ってこないでしょう? 『なんであなたに言われなきゃいけないの?』って。『あなたは言っていることを全然やっていないのに、なんで私が言われなきゃいけないの?』って思っちゃう子も絶対的にいるから、だからまず自分がちゃんとやって、私が言ってもみんなが納得してもらえるくらいじゃないと、私は口出しできないと思っているんです。キャプテンのときもそうでした。キャプテンって言わなきゃいけない仕事だから、キャプテンのときはよりちゃんとやりました。当たり前のことだけど、練習のひとつひとつに手を抜かないとか、必死になって声を出すとか。たとえば声を出していない人から『声を出しなよ』って言われても『え?』って思うでしょう? 人間だからね。いや、『え?』って思っちゃいけないのかもしれないけど、まずは言う人が納得されるようにならなきゃいけないと思うんです。チームには若い子もいるし、高卒の選手もいる。それこそあまり響かない子もいるなかで、どうやったらみんなに伝えられるか、響かせられるかといったら、まずは自分がやって、納得してもらえる、信頼してもらえるようにならないと、そこはいくら口で言っても入っていかないから。そこは自分が気づけて、変わってきたところだと思います」
トップのポジションに立って、プレーコールをし、ゲームをコントロールする。ディフェンスでは最前線で相手にプレッシャーをかける。それだけがポイントガードの仕事ではない。それをするための姿勢が普段の練習から問われている。ポイントガードとはそういうポジションでもあるのだ。
一朝一夕で成せるものではない。成功と失敗を繰り返しながら、吉田は自分なりのポイントガード像を築いてきたのである。
part5「やっぱり私はポイントガードが好きなんだなって」に続く
文 三上太
写真 安井麻実