いかに気づいてあげられるか
ゲームの流れをいち早く察知し、チームメートの良さを引き出す。吉田はそれを練習から意識している。
「練習中に何か雰囲気が悪いなっていうときはわかるし、みんながフワフワしているなっていうのもわかるから、そのときにポイントガードがどう声をかけてあげられるかが大事。でもそれは経験を積み重ねるしかないんです」
しかしこの“経験”という言葉はとてもやっかいなものだ。わかるようで、わからない。どう積み上げていくのか。
そこには“学び”の姿勢が必要になってくる。
今でこそベテランポイントガードと呼ばれる吉田だが、JX-ENEOSサンフラワーズに入団して、少なくとも中堅と呼ばれるまでの数年間は、練習の雰囲気が悪くなったときに先輩たちがどのような声掛けをするのか、その声掛けで雰囲気がどう変わっていったかを肌で学んできた。
チームメートの動きがよくないと気づけば、あえてその選手にパスを回さず、時を待つことも学んだ。動きのよくない選手とは違う選手にパスを配給しながら、目の端では常にその選手の動きを追っておく。そして落ち着いてきたなというタイミングでパスを送ると言うのだ。
「調子が悪くて、フラストレーションが溜まっているなと思ったときにパスを配り続けていると、それが余計なフラストレーションになったりするんです。だったら落ち着いてきたときに、よりゴールに近い場所でボールを持たせて、シュートを決めさせてあげる。そうやって一緒に練習をしていくことで、わかってあげられたところがたくさんあるんです」
ちょっとした配慮である。試合で状況判断が求められるように、吉田は練習から周囲に目を配り、どうすればチームの雰囲気がよくなるかを考えている。試合を見る限りではチームの先頭に立ってグイグイ引っ張っていくタイプに見える吉田も、実はその裏でとても細やかな気を配っている。
そこにはコミュニケーションも欠かせない。JX-ENEOSのように1年の大半を一緒に過ごすチームメートもさることながら、日本代表のように短期間で、所属の異なるチームの選手と一緒にプレーするときは余計にそれが欠かせない。