── その中で1番思い出に残っているのはどんなことでしょう。
うーん、そうですね。僕の同期は自分を入れて7人だったんですが、そのうちの3人は全中(全国中学生バスケットボール大会)の経験者、僕はみんなの足を引っ張る初心者、残りの3人はそれほど強い学校から来たわけではない人たち…と、最初から実力差がありました。そのことで目に見えない歪みというか、表立って仲が悪いわけじゃないんですが、どこかで一体になりきれない空気を感じていました。2年生のときに修学旅行があって、うちの学校は中国、ハワイ、シンガポールの中から自分が行きたい国を選べるんですね。7人の行き先は別々でしたが、シンガポールを選んだ僕は旅先でめちゃめちゃきれいな景色を見たんです。本当に感動するくらいすばらしい景色。うわぁーっとなってそれを見てるとき、ふと「7人でここに来たかったなあ」と思ったんですね。この景色をみんなで見たかったなあって。バスケとは直接関係ないんですが、そのときの自分の気持ちが今でも忘れられません。うまく伝わるかわからないですけど。
── 伝わりますよ。わかります。
部活って常にみんなが仲良しで、毎日が平和で楽しいわけじゃない。さっきも言ったように僕たち7人の中ですら小さな歪みがあったわけで。
── はい。
でも、自分が心から何かに感動したとき、みんながいっしょだったらよかったなあと思ったんです。なんでしょうね。本当に自然にそういう気持ちが沸いてきて、今でも時々思い出します。
── それも歩さんがバスケットをやって得たものかもしれませんね。
そうですね。それは『ECHOES』にも反映されていると思います。
── 高校のときにはすでに漫画家になりたいという夢があったのですか?
いえ、そのころは自分がマンガを描くとは思っていませんでした。絵を描くことはずっと好きだったので小学生のときから「将来は絵を描く仕事をしたいな」とは思っていましたが、高校のころは漫画家ではなくイラストレーターになることを考えていましたね。それで卒業してから札幌にある専門学校に2年間通い、その後はゲームの下請け会社に就職しました。