一度全てをリセットして前に進みたい
移籍が活発になりはじめたWリーグ。今シーズンは13人が新天地でプレーしており、昨シーズンの7人より飛躍的に増えた。ファンにとっては、応援する選手がチームを去るのは寂しい。しかし、選手にとってはステップアップ、キャリアアップにつながる。バスケ選手として稼げる時期はけっして長くはなく、納得できるプレー環境を求めるのも選手の権利であり、プレーヤーズ・ファーストとなる。
Wリーグの多くは企業チームということもあり、移籍のハードルはまだまだ高いようにも感じている。デンソーアイリスから富士通レッドウェーブに移籍したオコエ桃仁花に、その経緯を赤裸々に語ってもらった。
── 移籍を決断したきっかけは?
一番のきっかけは昨年のワールドカップで日本代表に選ばれ、自分の夢や目標がガラッと変わったことです。当時のチームでその夢を叶えることは難しいと自分自身が感じ、真っ先に移籍という言葉が浮かびました。
── デンソーアイリスには髙田真希選手ら日本代表選手がおり、学べることも多かったとは思いますが?
ワールドカップで一番感じたのは経験値の差です。所属チームでプレータイムが少なく、試合経験が足りていない中で、その中でも日本代表で結果を残さなければいけないことは難しいと思いました。一番私の心に残っていることが、昨年の最初の日本代表合宿で他の選手たちに「桃仁花のプレーを初めて見た」と言われたことです。そのときはショックとともに、負けたくないという闘志が芽生えました。そして、もっと試合に出て活躍したいという欲も出てきました。リツさん(※髙田選手のコートネーム)など日本代表で活躍する選手もいて、2年間で学んだことも多かったのですが、経験をつむために移籍することを決めました。
── 移籍するために何からはじめたのでしょうか?
まず客観的に全体のチームを見比べました。移籍先に求めていた条件のひとつに、日本代表と同じシステムのチームという条件がありました。その中で一番最初に話をくれたのが富士通でした。富士通の足りない部分がリバウンドや4番ポジション(パワーフォワード)であり、私にとってもすごくフィットしていたこともありました。将来的には3番ポジション(スモールフォワード)も見据えなければなりませんが、2020年に向けてまずは4番でがんばらなければなりません。そのポジションができるチームを求めたときに、富士通だと思いました。
── BTテーブスヘッドコーチとはどんな言葉を交わしましたか?
BTヘッドコーチと話したときに、「チームとして欲しいというのではなく、一人の人間としてあなたを育てたい」と言われ、選手への愛情の深さを感じました。富士通以外にもいろんなチームと話をさせていただきましたが、勝利のための一人ではなく、これからのバスケ人生のためにバックアップしてくれるという熱い思いが伝わってきました。これも富士通に決めた理由のひとつです。