part2より続く
どんどんバスケが好きになっています
同じ1987年生まれの吉田亜沙美(JX-ENEOSサンフラワーズ)が引退をした。「それ…聞きますか?」という王新朝喜もまた葛藤があった。
「ファイナルの表彰式が終わったあと、『やりきった』『幸せ』と周りには言っていました。その後、ホテルに戻ったときに『自分にウソをついているなぁ』とふと我に返りました。全然やり切ってないし、ファイナルも5ファウルし、得点もさほど決めていない。チームとして良い試合ができたことはうれしかったけど、目の前で喜ぶJXの選手の姿を見せられたらやっぱり優勝したい。表彰を受けている選手たちみんなが輝いていて、すごくうらやましかったです」
満足感を覆す悔しさがこみ上げてきた。同時に「もう1年続けるとなると長いですし、どれほどの覚悟を持つことができるか不安がありました」と簡単には踏み出せない。悩む王の背中を押してくれたのは、先に引退を決めた吉田だった。
「少しでもやりたい気持ちがあるならば続けた方が良いよ」
今オフはいろんな人を訪ね、様々なアドバイスをもらった。全ての意見に勇気づけられる。
「バスケがやっぱり好きだな、やってもやってもやりきれていないことを把握できました」
引退を考えたのは今年が最初ではない。昨年のオフも頭を悩ませた。しかし、現役を続行したことでファイナルを経験することができた。続けていれば、きっと良いことがある。
王自身は忘れていたが「三菱に入る際、当時のヘッドコーチだった山下(雄樹)さん(現GM)と面談をしたときに、『日本代表になりたいです』と言っちゃったみたいです」。漠然としたその夢を叶えるべく、周りの方々が水面下で動いてくれた。ポジティブな言葉を発したからこそ引き寄せられたと、今では信じている。2013年に日本国籍を取得し、すぐさま日本代表に選出される。2016年にはオリンピアンとして歴史に名を残すこともできた。
しかし、その華やかな舞台の裏側では、「もっと練習しておけば良かった」という後悔の念をはじめて抱く。「試合に出たいけど、今ここで出ても通用するわけがない、と自信がない。でも、せっかく来たのだから絶対に出たいという思いが葛藤していました」。その悩みを払拭するためには練習しかないが、リオの地に着いてからではすでに遅かった。