── それは日本の女子バスケットをもっともっと盛り上げたいという思い。
大神 はい。発展させていきたいです。最終的にはコーチになりたいですけど、それまでに学ぶところはたくさんあるんじゃないかなと思います。
── 先輩としては、日本の頂点に登り詰めた“ドペーペー”が新たな山に挑戦するにあたり、どうあってほしいと思いますか?
萩原 この子はやっぱり誰しもができない経験をしているわけで、特にアメリカでプレーした経験はとても貴重なわけです。変な話、日本でまだ3人しかいないわけだから。だから日本のバスケットのために、男女問わず、生かしてくださいという思いはありますね。今、本当にやめたばかりで、やりたいことがたくさんあるのはわかるし、でもあまり「自分探し」が長くなってしまうと本当に何をやりたいかがわからなくなってしまう。
大神 確かに。
萩原 1年くらいいろんなものを見て、考える期間があってもいいと思うんですけど。今までいた私たちとはちょっと違うタイプのコーチになってほしいなと思いますね。
── 海外の経験を生かして、日本固有のもの以外のもの取り入れてほしいと。
萩原 はい。海外とつながっているというツールは彼女がこれまで獲得してきたものだし、これはみんなが持っているものではないので、それを武器として生かしていくべきだと思うし、そうなってほしいと思います。
── どうですか、ジグザグを一緒にやったコーチからこう言われています。
萩原 ハハハ。
大神 確かに海外に挑戦したことで、向こうで出会った人たちが何かと気にかけてくださったり、今回のロシアリーグ観戦も中国WCBAの山西フレームに所属していたときのルーカス・モンデーロヘッドコーチが、今ロシアのクルスクというチームを率いていて、そのつながりで試合を見に行かせてもらったんです。そこは確かにオーさんが今おっしゃったように、そうしたつながりは誰もが持っているわけじゃないし、挑戦したことで得た自分の宝物だし、武器なので、そこは生かしていけたらいいなと思います。
── 将来的にシンがオーさんのもとでアシスタントもありうる?
大神 もちろんです。
萩原 いやいやいや……そんなとんでもない(笑)。
大神 いやいやいや……じゃ、スキルコーチで。
萩原 あ、スキルコーチはいいかもね。本当に女子でこれだけスキルを教えられる人はいないかも。それはいいかも。
大神 スキルは自分もトレーニングとかに行って、いや、本当におもしろいですからね。必要なことでもあるし。若い世代は特に……でも今の日本の選手のスキルはすごいですよ。
萩原 すごい。上手だよ。
大神 本当にうまくかわすんですよ、これがまた。
その後、カバー(フリーペーパー版の表紙)撮影に入ると、またも昔話が飛び出す。
萩原 そういえばアテネのとき、試合前の練習が終わって、シューティングをしているとき、シンがフローターの練習をしていたんです。まだ今ほどフローターが定着していない時代だったよね。
大神 そうですね。
萩原 遊び感覚でやっていたそれを、その日の試合で実際に決めたんです。あれは驚いた!
大神 そうそう。ロシア戦です!
萩原 シンはそういうことのできる選手だったんです。
その会話で気を良くしたのか、大神さんはカメラマンが示す注文以上のパフォーマンス(?)を披露してくれて、次々に写真に納まっていく。
“ドペーペー”時代からの付き合いは永遠なり!
特別対談延長戦
【全文掲載】女子バスケットのレジェンド初対談! 大神雄子×萩原美樹子の「女子バスケ温故知新」
① 出会い~朝のジグザグディフェンス
② WNBA〜道を切り拓いた2人
③ 世界〜日本女子の可能性
④ 言葉〜本気で海外を目指すなら
⑤ 挑戦〜おわりは次への第一歩
文・三上太 写真・安井麻実