萩原 ちょっとずつ大きくなってきているんだと思います。内海さんがよく言っていたのは「3番がいない」だったんです。それこそ藤原(有沙)とか内海さんの娘さん(亮子)だと170センチ台。あそこから比べると今はちょっとずつ大きくなってきているんだよね。
大神 今のアンダーカテゴリーだと、奥山(理々嘉・八雲学園3年)や今野(紀花・聖和学園3年)などは170センチ後半で2番をするなど、ガードも少しずつ大きくなってきているし、これからが楽しみですよね。
萩原 そうだと思う。
「U17世界選手権でアメリカの大学から声がかかった選手もいる」(萩原)
── その若い子たちの海外志向はどうでしょう? 男子は渡邊雄太、八村塁、田中力らがアメリカに出ていっています。女子の若い子はどうでしょう?
萩原 いますよ。たとえばU17……前回のスペイン・サラゴサでやったときの話だけど、U17ってアメリカの大学からものすごくたくさんのスカウト陣が見にやってくるの。正直に言うと、日本はガードのスキルがものすごく高いから、アメリカの大学から声がかかった子がいるんです。彼女たちも「ちょっと興味がある」と言う。だから今のアンダーカテゴリーの子たちでも海外に興味があるという子はいるにはいるんです。ただ、それを現実にすると、どうしたらいいかがわからない。ネットワークもないし、どこに、誰に言えばいいの? みたいな。それが現実。
── つなぐ人がいない。
萩原 そう。当然、学校の先生方にもご協力いただかなければいけないのですが、そういうことですよね。一人ひとりに本音を聞けば、興味がありますと答える子は本当にいるんです。ただシンくらい本気で、という子はなかなかいないですよね。本気でやる気があるなら、自分でそういうルートを取っていけばいいわけだから、
── 大神さんはそれこそ長岡さんと一緒にアメリカでトレーニングをしていましたよね。彼女たち若い子から相談を受けたりする?
大神 はい。でもまさにオーさんのおっしゃるとおりなんです。行きたいけど、どうやって行けばいいかわからない。オフシーズンにアメリカにトレーニングに行きたいんですけど、どうしたらいいかわからない、という相談がすごく多いです。1つきっかけを作ってあげたら、それからは行けるんじゃないかなと思うので、それこそ一緒にトレーニングに行けたらいいなと思っているんですけど、それでも毎回、私がすべての選手と一緒に行くことはできない。誰かが助けてあげることができれば、オフシーズンの過ごし方、トレーニングの仕方も変わるんじゃないかなと思います。だからオーさんが今おっしゃったように、興味のある人はいるんですよ。実際に口にも出しているので。でもどうしたらいいかがわからないのが現状です。
── 今後は大神さん自身もさまざまなことに挑戦するので、彼女たちの挑戦を一手に引き受けるわけにはいかないと思います。どうアドバイスをしますか?
大神 率直に言えば、そこはリーグや協会、チームが少しでも……たとえば自分が今所属しているトヨタ自動車なら、そこの関係者が「こういうところがあるけど行ってみるか?」とか、行動させる力をつけさせるなど、何もないところから何か手を差し伸べてあげることも大事かなと思います。
萩原 一番は英語じゃない?
大神 まぁ、それはそうですね。
萩原 英語ができれば彼女たちだって自分で行動できると思う。英語に自信がないから人に頼るんだと思う。だからどうすればいいかって聞くんです。語学ができれば、たぶんいろんな人をつかまえられると思う。
大神 確かにそうですね。
萩原 それこそアメリカでのワークアウトに連れて行ってもらったときに友だちになることもできるわけです。そこで英語ができれば、その人に来年も「行っていい?」って聞けるんです。英語ですよね。
大神 確かに(ヒル)理奈は今シーズンの途中でヒザを怪我しちゃったんですけど、そのままアメリカにトレーニングに行きました。リーグが終わってからもそうだし、リーグ期間中も、もちろんチームのサポートがあったんですけど、一人でポンと行っていました。彼女は英語も話せるし、向こうでひとりで行動できちゃうから。英語力。確かに必要です。
特別対談延長戦
【全文掲載】女子バスケットのレジェンド初対談! 大神雄子×萩原美樹子の「女子バスケ温故知新」
④ 言葉〜本気で海外を目指すなら
文・三上太 写真・安井麻実