── そう考えると渡嘉敷来夢は恵まれているんでしょうか? 彼女は同級生(大西ムーアダイアンまどかさん)が通訳でついてくれました。
萩原 でもコートの中の会話をその場でおこなうっていうのは、さすがに通訳がいても難しいですよ。渡嘉敷はつらいということをあまり人に言いたがらないタイプけど、たぶん苦労はしたと思う。
大神 そう思います。
── そうか、さっきのスクリーンの話でも、そういわれてもとっさにはわからない。
萩原 いや、言われることは意外とわかるんです。バスケット用語だし。こっちが言いたいわけ。「もうちょっとこの角度でかけてほしい」とかってハードルがものすごく高い。
大神 だから最初は「OK、OK」しか言わないです(笑)。
萩原 わかった、わかったってね。
「本気で海外に行きたいと思ったら、語学は絶対」(萩原)
── 本当に海外でやろうと思えば、やはり英語は欠かせない。大神さんはそれをずっと言い続けていました。審判に対してのコミュニケーション含めて。アンダーカテゴリーの日本代表でそういう勉強はしていない?
萩原 さすがにやっていない。たださっきの話じゃないけど、自分も含めて本気で必要だと思ったらやらなきゃダメだと思う。今の子たちが海外に興味があるけど、どうしたらいいかわからないというのは、本気じゃないんですよ。日本でやれたらいいと思っているんです。シンみたいに通訳をつけなかったことは本当に偉いと思うんですけど、たとえばしゃべれないと本当に困る人……アメリカに留学する人でも本気で英語を身に着けたい人は日本人の少ない学校に行くって言いますもんね。だから本気で、海外でプレーしたいと思ったら、英語の勉強するはずですよ。それをしないっていうのは、行きたいし、興味はあるけど、別に日本でもいいと思っているんでしょう。だからシンは続けられたんだと思います。できないと本当にすごく困るから。
大神 アメリカではメディアデーとかもあるので、そのときはすごく大変ですよ。カメラの前で何かを言わなければいけないので、最初は本当にちんぷんかんぷんでした(笑)。それ以外にもWNBAはプロなので、WNBA Caresというプログラムの一環で社会貢献活動もします。スポンサーの銀行の前でサイン会をやったり、トークショーをやったり、クリニックもやらなければいけない。もちろん英語で。
萩原 そうだよね。でもヨーロッパから来た選手などは英語がしゃべれるんです。
大神 うん。
萩原 私のときも1年目にロシアの選手がいて、2メートルの……
大神 (マリア・)ステファノーヴァ!
萩原 そう、ステファノーヴァ。
大神 懐かしい……。
萩原 1年目は私と一緒で全然しゃべれなかったのに、2年目に来たときはすごく流ちょうな英語をしゃべっていたの。だから彼女たちもちゃんと(英語の)トレーニングをするんだなって思ったし……あれは私の1年を恥じましたね。こんなにできるようになっているんだって。
大神 私も今回(シーズン終了後)ロシアリーグを見に行ったら、セルビアのシューターの(ソーニャ・)ペトロヴィッチがいたんですよ。彼女は4か国語をしゃべれるらしいんです。ロシア語、セルビア語、スペイン語、英語。びっくり! ああいう環境は本当にすごい。
── そういうところで日本は、行きたいと言ってもまだまだ意識が……
萩原 ないですね。だから本気じゃないんじゃないの? って思いますよ。当然、まだ日本語もしっかり話せない子も多いから。
大神 ハハハ。
萩原 でも本気で海外に行きたいと思ったら、語学は絶対ですよ。
特別対談延長戦
【全文掲載】女子バスケットのレジェンド初対談! 大神雄子×萩原美樹子の「女子バスケ温故知新」
⑤ 挑戦〜おわりは次への第一歩
文・三上太 写真・安井麻実