7人の新人を迎えた新生デンソーアイリスにとって、女王JX-ENEOSサンフラワーズに敗れはしたが、皇后杯準優勝は大きな自信になった。一方で小嶋裕二三ヘッドコーチは「第2、第3の髙田が出て来なければいけない。メンバーは揃ってきているが、底上げしていかなければJX-ENEOSとの差は埋められない」と言うように、チームとしての厚みを増すことが急務である。名前が挙がった髙田真希選手は、通算5000点まであと10点に迫るリーグ屈指のポイントゲッター。髙田選手とともに、デンソーのインサイドを任されているのは3年目の赤穂さくら選手。「第2、第3の髙田」に一番近い存在である。
「リツさん(髙田選手のコートネーム)は日本を代表するすごい選手であり、日々の練習からマッチアップできることがプラスになっています。それが試合での自信にもつながっています」
チームの血肉となった1週間で3度対戦した年始のJX-ENEOS戦
今シーズン初対戦となった皇后杯決勝に続き、再開したWリーグの最初の試合は再びJX-ENEOSとの連戦となった。小嶋ヘッドコーチは、「1週間で3度対戦できたことは、若いチームにとって血肉になっていくためにもすごく大きかったです」と振り返る。
「簡単にやられてしまったことが今のうちに足りないところであり、皇后杯後の練習で修正しました。そこを確認できたことが、富士通戦のインサイドに対するディフェンスにもつながった部分はあると思います」
JX-ENEOS戦時、マッチアップする大﨑佑圭選手に対して、赤穂さくら選手は昨シーズンとは違う感覚を覚える。
「これまでは押し込まれて点数を決められてしまいましたが、押し負けずに踏ん張れたことでメイさん(大﨑選手のコートネーム)のシュートが落ちる場面が少しありました。そこをもっと増やしていけるようにしたいです」
JX-ENEOSとの3連戦はついぞ勝つことはできなかったが、そこで経験したことを生かし、今節の富士通レッドウェーブ戦は上位チームを相手に初の2連勝を飾っている。富士通戦では、ルーキーとはいえ188cmと大きい栗林未和選手とマッチアップした赤穂さくら選手。初戦は13点を許し、栗林選手のバスケットカウントからスタートした第2戦も第1クォーターだけで5点を決められ、試合のペースを握っていたのは富士通の方だった。
「さくらには守り方を指示していたが、そればかりをやろうしてしまってました。その前にしなければならないフィジカルコンタクトや、やられる前にやっつけることが疎かになり、守ることしか考えてなかったです」という小嶋ヘッドコーチの指示に対し、実直に対応したことが裏目に出てしまった。ハーフタイム時、「まずは簡単にボールを持たせないこと。簡単にプレーさせないこと」を徹底させると栗林選手の得点は止まり、その後はフリースローで許した2点だけの7点に抑えることに成功。チームとしてもインサイド陣が起点となり、後半すぐさま逆転し、69-54で勝利を収めている。「高さがあってステップインも上手い選手です。先回りしてしっかり守る練習をしてきたことで、抑えることはできたと思います」と赤穂さくら選手自身も納得の出来であった。
流れを呼び込むインサイドの起点に!
チームが若返ったことで、21歳の赤穂さくら選手の意識も変わりつつある。
「JX-ENEOSのようなインサイドが強いチームは、流れが悪くてもしっかりインサイドから得点を獲ってその悪い流れを断ちきるイメージがあります。自分もリツさんだけに頼っているのではなく、しっかりインサイドでプレーしてチームを支えられるようになりたいです」
そのためには、「プレーの幅を広げながらジャンプシュートの確率をもっと上げること。1on1をもっと積極的に仕掛けるようにしていきたいです」という課題に取り組んでいる。
試合を重ねながら「やりたいプレーがどんどんできるようになっています」とチームプレーも向上してきた。その一方で、富士通戦では赤穂ひまわり選手との速攻時、「ひま(わり)がそのままシュートを打つと思ったら、パスが来たのでビックリした」と目を丸くしていた姉妹のコンビプレーは失敗に終わり、顔を見合わせて固まっていたのはご愛敬。その後はしっかり息の合ったコンビプレーを見せており、赤穂姉妹の活躍もデンソーの武器として精度を高めている。
長いケガから復帰したオコエ桃仁花選手も楽しみな存在だ。少ないプレータイムながらJX-ENEOS戦では9点を挙げ、富士通との初戦は10点と二桁に乗せており、積極的にゴールに向かっていた。シーズンを通してしっかり経験を積めば、自ずと「第2、第3の髙田」が台頭してくることだろう。
次節は宮古島でまだ未勝利の新潟アルビレックスBBラビッツ戦を行い、そして2月3日(土)はホームゲームとなるウイングアリーナ刈谷にて、現在2位のトヨタ自動車アンテロープスを迎える。1ゲーム差で追う3位のデンソーにとっては、順位をひっくり返すチャンスであり、大きなチャレンジでもある。
文・写真 泉 誠一