上位グループ3〜6位の対戦は混戦必至と言えよう。
シーズンを通してケガ人に悩まされ、時には6人で戦わなければならなかったデンソーアイリスだが、ようやく全員が復帰し、スタートラインに立った。逆に2次ラウンドでケガ人が続出したシャンソン化粧品シャンソンVマジックは、最後のデンソー戦は主力4人を休ませなければならなかった。しかし裏を返せば、プレーオフに照準を合わせているとも言える。2次ラウンド全敗したシャンソンだが、選手が揃い、その力を発揮できればダークホースになり得る。ケガ人こそいなかったが、富士通レッドウェーブも最後は3連敗し、足踏みをしてしまった。
この3〜6位の中で、一番元気なチームが三菱電機コアラーズである。1次ラウンド終了時点、5位だったが、2次ラウンドではトヨタ自動車アンテロープス、シャンソン、さらに富士通にも勝利し、勢いづくまま4位に浮上している。「しつこく粘り強くディフェンスしろ、と練習中から常々、口うるさく言っています」と古賀 京子ヘッドコーチが徹底してきたディフェンスからリズムをつかみ、良いオフェンスにつなげている。
慢心すること無く、「チャレンジャーとして全力を出し切ってのぞむだけです」と古賀ヘッドコーチは話しており、選手たちもまだまだ未完成と口を揃え、プレーオフまでの期間でさらなる成長を目指していた。
これまでは誰かしら大きなケガ人を抱えていた三菱電機だが、今シーズンは目立った故障者はいない。“ヘルシー(健康状態の良い)”なチームが強いチームの条件であり、それを体現し、昨シーズン8位から4位への躍進したのが三菱電機でもある。最終戦で出番の無かった池谷 悠希選手は、肩を痛めたことで大事を取った。プレーオフには戻ってくると話していた。
シャンソンを始め、残る10日ほどでどこまで戦力を増やし、コンディションを高めてくるかが勝利へのカギになる。健康状態が良いからこそ、気持ちもしっかり乗って試合に臨める。選手起用も含め、3〜6位チームの戦いは、何が起こるか分からない。
3位:富士通レッドウェーブ vs 6位:シャンソン化粧品シャンソンVマジック
第1戦/2月18日(土)13:00 鹿児島県・いちき串木野市総合体育館
第2戦/2月19日(日)13:00 鹿児島県総合体育センター体育館
第3戦/2月20日(月)16:00 鹿児島県総合体育センター体育館(開催されない場合あり)
■今シーズンの対戦成績:富士通(3勝)シャンソン(0勝)
主力4名(本川 紗奈生選手、三好南穂選手、元山夏菜選手、河村美幸選手)を欠く、最終戦のシャンソンは満身創痍だった。「痛み止めを打ち、見ていてかわいそうなほど。クォーターファイナルへ向けて準備するために、ファンの皆さんには申し訳ないけど無理はさせられなかった」と丁 海鎰ヘッドコーチは状況を明かす。
逆にチーム最多得点の活躍を見せたのは、昨シーズンをケガで棒に振った内野 智香英選手。オフシーズン中のユニバ代表で、敗れはしたがアメリカと2回の延長にもつれる接戦を演じた。しかし、翌日の3位決定戦・ロシア戦で足を負傷し、世界4位になった立役者の一人であったが、その後に迎えたルーキーシーズンはコートに1度も立つことはできなかった。
復帰した今シーズンは、「始まった時から、とにかく試合に出て活躍できるようにと思ってやってきました」とガムシャラに走り、大きな戦力となる。ケガをしている仲間たちの胸の内は痛いほど分かっており、初のプレーオフはチームを引っ張る存在にならねばならない。
「富士通にはオールジャパンを含めて4試合を戦い、全て僅差で負けています。ちょっとした気持ちとか、決定力の差、リバウンドやルーズボールへの執着心といったところで負けてきたと思います。基礎から見直してがんばっていきたいです」
富士通もまた、2次ラウンドは苦戦が続いた。「チームとして徹底できていない部分が多い。負けた時はいつも同じ課題になってしまっています」と山本 千夏選手は振り返る。ディフェンスから崩れ、オフェンスではボールが回らなくなってリズムに乗れない負けパターンは、最終戦の三菱電機でも出てしまった。
だが、「3Pシュートが段々良くなってきています。もう少し積極的に打っていきたいです」と山本選手自身の調子は上向いており、期待が持てる。
3Pシュートで勢いに乗るのが富士通の強みだ。「もう少しスペースをしっかり作れるようにボールを動かして、チーム全体で3Pシュートを狙いにいきたいです」とクォーターファイナルへ向けて、もう一度自分たちのプレーを再確認して臨む。
「まずはクォーターファイルに勝つことに集中しなければいけませんが、今シーズンは(セミファイナルで対戦する可能性が高い2位)トヨタにも負け越しているので、まずはシャンソンにしっかり勝ち切ってトヨタにリベンジしたいです。先を見過ぎずに一つひとつ勝ち進んで行き、今シーズンを通してJX-ENEOSを倒すために練習してきたので、そこまでたどりつけるようにしっかり勝っていきたいです」
4位:三菱電機コアラーズ vs 5位:デンソーアイリス
第1戦/2月18日(土)16:00 愛知県・スカイホール豊田
第2戦/2月19日(日)16:00 愛知県・スカイホール豊田
第3戦/2月20日(月)17:00 愛知県・スカイホール豊田(開催されない場合あり)
■今シーズンの対戦成績:三菱電機(1勝)デンソー(2勝)
昨シーズン8位から4位へと大きくジャンプアップした三菱電機。188cm王 新朝喜選手、187cm西岡 里紗選手のツインタワーは、JX-ENEOSに対抗するだけの高さを備えている。その強みを生かし、「まずはインサイドから攻めて、そこからのインアウトなど、アウトサイドのシューターに持って行けるようにしています」と自信を見せるのは渡邉 亜弥選手だ。
チーム全体で3Pシュートを徹底させるためにきついスリーメン練習を課してきたことが、花開いてきた。もう一つ、渡邉選手らガード陣のリバウンド数が多いのも特徴だ。
「今シーズン、3Pシュートやインアウトもそうですが、一番強化してきたのがリバウンドです。JX-ENEOSに勝つためにも、リバウンドで勝たなければならないと練習してきました。リバウンドやルーズボールを絶対に取り切ることは練習からずっと徹底しています」
順当に勝ち進めばセミファイナルでJX-ENEOSと当たる。その前に、今シーズン1勝2敗で負け越しているデンソーに勝たねばならない。
そのデンソーは今シーズン、ケガで悩まされた分、ベンチメンバーがしっかりと経験を積み、戦力となってきた。
「今までできなかった経験をみんなができるようになったシーズンです。一試合毎に経験し、そこで見えた反省点からそれぞれが何かきっかけを作れたと思います。それをこの先に生かさなければ、何もつながりません」とキャプテンの髙田真希選手は、仲間たちの成長に期待を寄せている。
順位が隣り合う4位vs5位は、常に実力伯仲の戦いとなる。どっちが勝っても、“女王JX-ENEOS狩り“に向けて、勢いづけたい大事な試合でもある。
文・写真 泉 誠一