1Q開始3分50秒、その時はやって来た──
12月7日(日)に行われた羽田ヴィッキーズ戦の取材時に、関係者から年内復帰があるかもしれないという情報をキャッチ。
1週空いて、年内最終週となった12月20日(土)墨田区総合体育館。再び、羽田との対戦。JX-ENEOSサンフラワーズ側ゴール下のフォトエリアいっぱいに横並びのカメラマンが配置し、その時を待っている。
試合が始まり、ベンチを見るとこれまで通り声をかけることに徹し、準備する気配はない。出て来るならば、先発メンバーでゲームを作り、ペースをつかんだ2Qまたは後半だろう。同じ頃、スマホに登録している海の向こうにある他会場の結果がブルブルと知らせてくれた。おっ、ウィザーズはヒートに勝ったか……。
ニンマリしてた次の瞬間、視野ギリギリのところで黄色い動きを察知する。ざわつく会場。
電光掲示板を見ると9-7、JX-ENEOSが辛うじてリードし、残り時間は6分10秒を示している。テーブルオフィシャル横に視線を移すと、モタモタとウォームアップを脱ぐのに一苦労な様子を、みんなが固唾を呑んで見守っている。それだけ長い期間、ユニフォームになっていなかったスターが、ついに帰ってきた。
吉田 亜沙美選手、約10ヶ月ぶりの復帰である。
コートに入るや否や、JX-ENEOSのバスケットが変わった。
パスが前に飛び、スピードが上がる。日本が誇るフロントコート陣が待つ相手ディフェンスの裏側へ、いとも簡単にパスを通していく。うれしさの余り、自然とこぼれてしまったのか、幾度となくプレイ中に笑顔を見せてくれた。
時間制限がある中での出場とあり、再び先発を担う宮崎 早織選手が交代を告げに行く。ボールはエンドからのスローイン。宮崎選手の気配を感じた吉田選手はそれを待たず、イタズラっ子のような表情でボールをコートに入れて、プレイオン。楽しそうだ。
17分間出場し、7本のアシストを決め、72-48で復帰戦を飾った。
吉田選手がコートに戻ってきた時、とびっきりの笑顔で迎えた渡嘉敷 来夢選手。
「ゲームの流れが変わります。1年目からずっと一緒にやってきたので、本当にうれしいです。自分の力を最大限に引き出してくれるのはリュウさん(吉田選手のコートネーム)しかいないと思っています」
同じくインサイドの要となる間宮 佑圭選手もまた、安堵の表情を浮かべていた。
「やっぱり心強いです。パスがビュンビュン飛ぶし、それがターンオーバーになっても前向きにいられる。一気に流れが良くなるな、と改めて思わされました」
吉田選手のターンオーバーは3つ。際どいパスをキャッチできない場面もあったが、それでも「本当にしっくり来ます」と間宮選手は続けた。
「欲しい時に確実にボールをもらえますし、自分が空いていないと思っていても、リュウさんから見て空いてる時にポンと飛んで来て、『なんだぁ、行けたのか』というプレイもあったので、本当に良いです」
オールジャパン(皇后杯)前のWJBL前半戦を終え、10勝2敗。他チームより試合数が2試合少なく、現在3位。結果以上に厳しい試合を強いられてきた。
「これまではだいぶ試練だったと思います。だからと言って、今後も試練が無いとは言いきれないですし、ここから違う課題も出て来ると思います。リュウさんも復帰したばかりですし、150%の力を出せるかと言ったらそういうわけにもいかず、みんなでカバーしていかなければいけない。でも、帰って来てくれたことで、流れが違いますよね。ボールが前に飛ぶし、パスも来る。この1年くらいリュウさんと合わせていなかった期間を、残り少ない練習で、オールジャパンへ向けて合わせていきたいです」
うれしそうに渡嘉敷選手は話してくれた。
インサイド陣にはもう一つ朗報があった。この日、吉田選手とともに木林 稚栄選手も復帰を果たす。
2連覇を目指すオールジャパンに向けて、照準を合わせ始めた。JX-ENEOSは1月3日(土)大田区総合体育館で行われる3回戦から出場する。
「リュウさんのことを見ていれば、(パスが)飛んでくることが分かるので、常に見てます」と渡嘉敷選手が話すように、ファンにとっても吉田選手から目を離せない。
JX-ENEOSサンフラワーズ
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泉 誠一