話は変わって、木林HCには2人の弟と1人の妹がいるが、2022-23シーズンから長崎ヴェルカのファンクラブに入っているという木林HCは、13歳離れた末弟の優が昨年12月に長崎に入団したことを喜んだ。
「バスケット一家なんですけど、私も引退しましたし、木林家で現役は下の弟だけなので、家族一同応援できるのはそこしかない。男子のことはあまり知らないので、『水曜ゲームとかアウェーの試合ってどういう生活リズムなの?』とか、単純に興味があって弟によく訊いてますし、弟が入ったことでBリーグはより見るようになりましたね。バスケットの勉強という意味で試合を見ることも多いですけど、ほぼファンのように見ることも多くて(笑)」
弟は5月に、日本代表の第1次合宿に相当するディベロップメントキャンプに招集されている。将来はA代表候補にも名乗りを上げることになるだろうが、木林HCは一歩ずつステップを踏んで成長していくことを望んでいる。
「あのサイズ感とプレースタイルで各世代の代表にずっと呼ばれてましたけど、今は女子も男子も代表がすごくレベルアップして、同じポジションでもジェイコブス(晶)君が出てきて、大変だろうなと思います。変な期待もせず、入らなかったからといって何も思わないです。応援しがいがあるように、まずヴェルカのロスターに入ってほしいですし、毎試合スタッツを見て気にかけてはいます。あとは、単純にヴェルカを応援してます(笑)」
木林HCには、弟の存在によって恩恵を受けているところもある。それは、コーチ業に励む今の立場ゆえの恩恵だ。
「上の弟、木林毅も北陸から筑波に行って、大学では馬場(雄大)君の1つ上なんですけど、男子のコーチや指導者の方に “木林のお姉ちゃん” として知ってもらえることが多いんですよ。講習会に行ったときも声をかけてもらえますし、こっちから挨拶するときも『長崎の木林の姉です』って言うと、『あぁ!』みたいな(笑)。女子界隈のスタッフだけじゃなくて、男子のほうでもいろんな輪が広がって、『弟、ありがとう』って思ってます(笑)」
そんな弟をさらに利用して、と言うと表現が良くないが、多くの人に認知を広げることも意識している。SNSに「実は社会人チームのHCやってます」と投稿したのも、弟が長崎の一員となったことで自身の存在を知ってもらうことができたからだ。
「弟に負けないように、ちょっとでもバスケファンに注目してもらえたらって、それは本当に思ってるんですよ。バスケの世界にいた私ですら、最初に山形銀行の話をもらったときに、どんなチームがあるのか、いつ試合してるのかもよくわかってなかったので。でも、現場に来るとすごい熱量でやってて、この頑張りは知ってほしいなと思います。ツイッター(現・X)も、ENEOSのときからのファンとか、今はヴェルカファンの方にもたくさんフォローしてもらってるんですけど(笑)、山形銀行ライヤーズとか、社会人というカテゴリーで頑張ってる子たちがちょっとでも目に入るように、宣伝したいと思ってやってます。ライヤーズが頑張ったり、弟の知名度が上がることで『あの木林のお姉ちゃんが』って注目を浴びるようになったらと思うので、弟に発破かけときますね(笑)」
一昨年度に山形銀行を社会人日本一に導いている木林HC。選手たちが陽の目を見るために、ときには弟の力も借りて、奮闘の日々を送る。
文・写真 吉川哲彦