アイドル寄りの佐藤まりあは、そのダンスや割れた腹筋が彼女のストイックさを醸し出している。ノリノリのダンスチューンが多い中で、佐藤まりあの歌声はしっとりとしたスローナンバーこそ、芳醇に香り立つ。7インチレコードでカットされ、すでにレア盤となっている「シスター」やクリスマスソング「二人のエクリチュール」でその本領を発揮。アイドルであり、本格派アーティストとして殻を破りはじめた彼女ら4人の特徴が見事なグラデーションとなり、幅広い世代やさまざまな音楽嗜好を持った方々に愛されることだろう。
MISIAや宇多田ヒカルなど、日本人女性R&Bディーヴァは数多存在する。しかし、現在進行形で活躍する日本人女性R&Bグループとなると…思い浮かばない。グループだからこそ重厚感を増すハーモニーもまた、フィロソフィーのダンスの大きな武器となる。メインヴォーカル日向ハルと奥津マリリ、その両脇を支える佐藤まりあと十束おとはが奏でるコーラスが重なり合って、フィロソフィーのダンスが完成する。希有な日本人女性R&Bグループを音源で聴くのはもちろんだが、ぜひ公式YouTubeにアップされているライヴ映像も合わせて、その歌唱力や哲学であるダンスの意外性など、その魅力を堪能していただきたい。
4月に都内で行われるフィロソフィーのダンスのライヴチケットはすでに完売。「ベスト・フォー」なフィロソフィーのダンス+世界に誇るWリーグによる “ベスト・ファイブ” なコラボが、プレーオフでどんな展開を見せてくれるのか…はたまた実現するのか。ヤキモキしながら、WリーグサイトやSNSをチェックする日々が続く。
聴いた瞬間にエバーグリーン「テレフォニズム」
アートやグルメ、音楽などはメディアや口コミなど他者からの情報によって、その印象が左右されることは往々にしてある。しかし、はじめて聴いたにも関わらず、エバーグリーンを感じる瞬間が音楽にはごく希に訪れる。その感覚を「テレフォニズム」で味わうことができた。昨今、世界的なシティ・ポップ・ムーヴメントで掘り起こされた松原みき「真夜中のドア〜Stay With Me」をどこか彷彿とさせるミディアムナンバーだ。
込み上げていくサビの途中に入る「ベイべー♪」がなんともいなたく、心に響く。YouTubeのキャンプ番組で「テレフォニズム」を生披露していたが、屋外でゆったり歌う4人の抜け感が心地よい。音源やライヴとは違って、4人揃って「ベイベー♪」と声を揃えるレア・ヴァージョンに幸福が舞い降りた。
フィロソフィーのダンスは「ラブ・バリエーション」でSCOOBIE DOとコラボし、アルバム「サピオセクシャル」では様々なアーティストがリミックスを担当。「ジョニーウォーカー」ではアメリカの凄腕スタジオミュージシャンであるGROOVE ASYLUMを従えて、見事なパフォーマンスを披露している。デビュー当時から素晴らしいリズムやメロディーを刻む本物のミュージシャンたちと対峙し、場数を踏んできた成果が実を結びはじめた。今後も多くの掛け合わせが彼女たちを成長させ、5年後や10年後の姿が今から楽しみでしかない。Wリーグとのコラボにより、ともに世界一を目指す布石になることを願っている。
文・写真 泉誠一