「オフシーズンに体を動かす機会ってそんなにないし、こういう場を設けてもらうことがありがたいです。体も絞れますし、常にボールを触っていられるということがすごくありがたくて、そういう意味でもすごく助かってます。私はずっと体を動かしていたいほうかもしれないですね」
今回ZOOSでプレーする機会を今野に提供したのが、ZOOS代表の桂であることは言うまでもない。8歳離れている桂と今野の最初の接点は日本代表合宿。渡米している間も代表候補として合宿に招集されてきた今野は、そこで桂と意気投合し、今回の縁にも結びついた。桂への感謝の気持ちはもちろん強く、ZOOSという組織の根底にある理念にも共感を抱いている。
「ZOOSにとっても国内で試合に出る最初の取り組みということで、そういう場に選んでもらえたというのがすごく嬉しいです。葵さんが掲げたZOOSのテーマとして、いろんな女性に活躍の場を与える、サポートするというのが芯にあるところなので、自分自身もWリーグでプレーしてるけど、プレッシャーもあるし自分のポジションも決まってるし、いろいろ葛藤がある中で、オフシーズンにそうじゃない環境でこうやって楽しんでバスケットできるというのが自分には必要だったし、魅力的でした。何より、葵さんという人に魅力を感じて、そんな人に誘ってもらったので一緒にバスケットやりたいなって思ったんです。自分みたいな変わった人、扱いにくい人でも(笑)包み込んでくれる温かさというか、人柄が本当に素敵です」
実際の試合となると、今野自身は「いやもう、自分なんか何もしてないので、皆さんに感謝です」と謙遜するが、その確かなスキルでときに柔らかく、ときに力強くプレーし、チームの優勝に貢献した。優勝といえば、昨年12月にはデンソーが皇后杯初優勝を飾っているが、今野は開幕から戦列を離れており、皇后杯にも復帰は間に合わなかった。その分、今回の優勝は喜びも増したようだ。
「集まって2日くらいしか経ってないんですけど、ここまでできたっていうのは、引っ張ってくれた葵さんと、頑張ってくれた2人(小野寺、江頭)のおかげです。デンソーが皇后杯で優勝したときは私はいなかったし、今まで優勝ってあまり経験がないので、本当に嬉しいですね。何より、このメンバーでみんなで頑張って優勝したというのが嬉しいです」
Wリーグは先日のオールスターで2023-24シーズンの幕を閉じたばかりだが、7月にはサマーキャンプが予定されており、既に次のシーズンに向けて始動しているチームもある。今野自身も「自分はWリーグに所属しているので、まずはチームとしてリーグ優勝を目指して、その中でチームに貢献できる選手になりたいです」と次なる目標を見定めているところで、自由に活動できる時間もそう多くはないだろう。しかし、その限られた時間を割いて3×3にも精力的に取り組む今野は、常に成長し続ける女性アスリートの手本を見せてくれるに違いない。
文・写真 吉川哲彦