── 3×3って狭いスペースでさまざまな運動能力、身体能力を駆使しているように見えるけど、頭も使うスポーツなんですね。
山本 結構使いますよ。時間や点差もそうだし、ファウルをあと何回使えるとか……日本だとミスマッチを突かれるから、シュート前にファウルをしちゃうとか。そういったことを激しく動きながらはっきりと頭で考えられなければいけないんです。
── ほかに違う点はありますか? 外から見ていると「なかなかファウルコールがされないな」と感じます。
山本 確かに(笛は)全然鳴りませんね。それも5対5と同じようにレフェリーによって笛の性格も違うから、そこは試合ごとに調整していくしかないんですけど、始めたばかりのころ5対5のイメージで守っていたら海外の選手に簡単にやられてしまったんですね。やはり3×3に合ったディフェンスをしなければ世界で通用しないなって感じました。
3×3でのさまざまな経験は、5対5のレベルアップに通じる
── 3×3での経験は5対5のレベルアップにも通じると思いますか?
山本 通じると思います。3×3に比べると5対5のほうがフィジカルコンタクトで軽くなる分、当たられても動じないというか、フィニッシュが強くなるように思います。ディフェンスも原則的にヘルプがない分、1人で完璧にとまではいわないけど、ある程度は1人で守らなければいけないので、そこは5対5のレベルアップになると思います。一人ひとりの責任感が増すイメージですね。
── それはこれまで5対5で培ってきた感覚とは異なりますか?
山本 最初にも言ったとおり、3×3はコートに3人しかいない分、それぞれが役割をしっかり果たさなければいけません。私のポジションはシュート力を求められていると思うから、どんどんボールを触りにいかなければいけないし、そうした責任は果たしていかなければなりません。その考え方は5対5とちょっと違うように思います。5対5ではポイントガードとして周りを生かすことがメインになると思うんですけど、3×3だと、もちろん周りを生かすこともあるけど、点数を取りにいかなければいけないという気持ちのほうが強いんです。
── 今日のようにトヨタ自動車アンテロープスで5対5の練習をして、明日から3×3の日本代表合宿、そしてすぐに国際大会。すぐに切り替えられるものですか?
山本 5対5から3×3へは割とすぐに切り替えられるんです。でも私にとってはその逆が難しい。3×3は3人しかいない分、臨機応変にというか、ある程度自由にできるんです。でも5対5ではチームの決まりごとがあって、そのなかで強みも出して、周りにも合わせなければいけない。だから3×3から5対5に戻るときのほうが難しいです。
── 体力、知力、スキル、そして5対5との違い。大変なことが多いですね。
山本 はい、体力的にはきついですけど(笑)、いろんなことに挑戦できることが一番の楽しみかなって思います。
Wリーグから3×3の日本代表候補に選ばれる多くの選手が、代表チームから3×3専用のボールを借りている。しかし山本は自らそれを購入し、マイボールで自主練習をおこなっている。5対5への想いはそのままに、いただいたチャンスを生かし、やると決めたからには本気で取り組む。取材後も「今度の大会ではこの抜き方をやってみようと思っています」と新たなスキルを見せてくれた。本気だ。しかしその本気の先にこそ山本麻衣の未来は開けてくる――。
part1「初参戦のワールドカップでベスト3に輝いた3×3の新星⁉」
part2「3×3では攻守の切り替えをいかに早くおこなうかが勝敗のカギ」
文・写真 三上太