2部全勝優勝し、入替戦を圧勝して1部昇格を決めた大東文化大、大学屈指のシューター安藤周人を擁する名門・青山学院大、リーグ戦3位と躍進し波に乗る白鷗大…東海大にとって今大会は序盤から一時も気が抜けない試合が続いた。陸川章監督がことあるごとに口にしたのは「今年のうちの強みはチーム力」 ―― 例年に比べ突出した選手の存在はないが、全員が走り、跳び、粘るチーム力で決勝までの階段を一歩ずつ上がってきた。その中で目を引いたのは今年ケガから復帰した大矢孝太朗の献身的なプレーだ。とりわけ大きいとは言えない190cmの身体をぶつけるようにリバウンドを争い、全力でゴール下を死守する。「ここが自分の仕事場だ」と言わんばかりのその姿は、『チームで戦う』今年の東海大を象徴しているかのようにも見えた。
――残念ながら優勝には手が届きませんでしたが、大矢選手にとってはどんなインカレでしたか?
自分は去年のリーグ戦が始まってすぐ10月半ばぐらいだったと思いますが、練習中にケガ(靭帯損傷)をしてしまいました。そこから今年の2月まではプレーができず、ずっとリハビリの日々を送っていました。試合ではベンチにも座れず応援席にいて、そこからみんなが活躍する姿を見ていたんですが、それはやっぱりつらかったです。去年のインカレの決勝も応援席にいて、そこでチームが負けるのを見ました。そのとき来年は絶対この決勝のコートに自分も立ってやるという思いが、ほんとに強く沸いてきて、それがあったから今年もここ(決勝)まで来られたような気がします。
――最後に敗れたことは悔しかったけれど、個人的には「決勝の舞台に立つ」という去年の思いが達成できたわけですね。
はい。よく『悔しさをバネに』と言いますが、自分も同じで悔しさをバネにつらいリハビリやきつい練習を頑張ることができたと思います。精神的にも強くなれました。ケガは本当につらかったですが、その経験を通して自分がケガの前より成長できたなと、それを実感できたことはよかったです。
――ケガと言えば、大会直前に主力である伊藤達哉選手が手の骨折で戦線離脱を余儀なくされました。チームに与えた影響も大きかったと思いますが。
チームの中で達哉の存在はすごく大きかったので、その達哉が出られないことは間違いなく痛手でした。けど、そういう痛手より達哉自身が感じている悔しさの方がずっと大きいと思ったし、自分もケガの経験があるので、その悔しさはものすごくわかりました。それはみんな同じ気持ちだったと思います。それでチームが『達哉の分も頑張ろう』という思いでそれまで以上に1つになりました。特に自分たち4年生はその気持ちが強くて、より結束したと思います。
――自分はどんなプレーで貢献したいと思いましたか?
やっぱりリバウンドとディフェンスです。試合に入る前には必ず「俺は絶対に負けない」と自分に言い聞かせました。あいつには絶対リバウンドを取らせない、絶対シュートを打たせないという気持ちでコートに立ちました。
――筑波大戦も同様ですか?
もちろん同じです。ただ結果的に敗れたことは力が足りなかったということです。付けるところまで必死に付いていったのですが、ちょっとしたズレから相手のシュートを許してそこから乗せてしまったというか。今日の自分はダメでした。
――今年の筑波大は実力的に一歩リードしていると見られていました。それに対して東海大の武器はなんだったと思いますか?
チーム力です。今年のうちにはスーパースターはいませんでしたが、結束したチーム力がありました。ディフェンスもリバウンドもルーズボールも最後まであきらめず粘り強く、泥臭くプレーすることが武器だったと思います。だから筑波にも負ける気はしませんでした。それだけに本当に悔しいです。
――卒業後の進路は決まっているのですか?
決まっています。プロではないですが、バスケットは続けます。
――その前に東海大のユニフォームを着て戦う最後の大会、オールジャパンがありますね。
はい、自分たち4年生にとって最後の大会になるので、気持ちを切り替えて悔いのないよう戦いたいです。
文・松原 貴実 写真・泉 誠一