トーナメント4回戦では、西武文理大学を相手に68-131で圧倒。西武文理大学の加藤三彦監督は、スラムダンクに登場する山王工業のモデルとして有名な能代工高を当時率いていた名将。映画や原作で描かれているとおり、フルコートディフェンスで対戦相手だけではなく、ただ見ている傍観者の心さえ折り続けてきた。そんな加藤監督のチームを相手に、逆にフルコートディフェンスでプレッシャーをかけた明星大学が次々と速攻を決めていく。ちょうど5度目の映画を観た直後だったこともあり、愕然とする。4部や3部でも対戦してきた柴山ヘッドコーチも、「ちょっと元気がないなぁ」と加藤監督を心配していた。
続く対戦が、元日本代表キャプテンの経歴を持つ網野友雄ヘッドコーチ率いる白鷗大学。元ストリートボーラーの柴山ヘッドコーチとは同い年であり、指揮官として競技バスケの最前線で渡り合う姿が感慨深い。「強いチームと対戦できることがムチャクチャ楽しい。ワクワクするのが一番であり、この試合に向けてうれしすぎて寝られなかったほど(笑)。それほどこのトーナメントは、1部と対戦できる喜びがある」とチャレンジ精神旺盛な柴山ヘッドコーチ。日本にバスケ文化を根付かすためにFEBやストリートボールで活動していたときと変わらぬ情熱を注いでいる。
プロを夢見てギラギラする下級生たちのモチベーションを原動力にするチーム作り
大学3年生問題がささやかれる昨今。その時期を境に、Bリーグへ進む選手が増えつつある。関東大学2部リーグの明星大学の場合、少しニュアンスは違うが、Bリーガーを輩出しはじめたことでチーム作りが難しくなっていた。その実情について、柴山ヘッドコーチは「プロへ行く意欲がある選手は4年生になってもチームに残るが、それ以外はBチームでエンジョイできればそれで良い。『だって、僕らはプロに行かないから』と割り切ってしまう」と戸惑う。チームやバスケへの愛情が失われたわけではない。トーナメント前には練習相手となり、試合会場へ応援に来る。Bチームだけではなく、「Cチームは週2回ピックアップゲームや3on3をしているが、そこでも上級生はバスケを楽しんでいる」そうだ。
プロへ選手を輩出する明星大学だからこそ、同じ道を進むべく夢を持って入部。しかし、1〜2年と時が過ぎると現実や限界が見えてくる。「別にこのチームはプロ予備校ではない。その意識はもう少し変えていかなければいけない」と柴山ヘッドコーチと言い、大学バスケのあり方が問われ、転機が訪れている。