〜後編〜より続く
「悔しいという気持ちが芽生えたことが僕にとっての進歩かもしれない」明星大学・柴山英士ヘッドコーチ
5月5日の「HOOP IN THE HOOD」を最後に、FAR EAST BALLERS(※以下FEB)はその活動に終止符を打った。その前日、FEB発足の張本人であるAJは、関東大学スプリングトーナメント(※以下トーナメント)の会場にいた。LEGEND(※個人戦による日本初のプロストリートボールリーグ)や今も続くSOMECITYの立ち上げに関わり、ストリートボールシーンを開拓してきた。AJこと柴山英士は、FEBとして活動していた頃から明星大学のヘッドコーチも担い、その手腕を発揮して久しい。B1仙台89ERSの岡田泰希を筆頭に、Bリーガーも輩出しはじめている。
トーナメントではベスト8入りを懸けた5回戦まで進み、準優勝した白鷗大学に66-100で敗れた。1部リーグの白鷗大学に対し、柴山ヘッドコーチ率いる明星大学は2部であり、1・2年生が主力となる下級生チーム。昨年からメンバーがガラリと変わり、「どこまで戦えるのかも分からなかった」のが正直なところ。試合がはじまればその不安を払拭し、1部リーグの強豪相手に僅差で追いかける。しかし後半、対応してきた相手に少しずつ点差が引き離されはじめると「ヘッドダウンし、やっぱり無理だと選手たち自身が思ってしまった。そこが悔しい」。経験浅い選手たちは、メンタルから崩れていった。
ストリートボールのパイオニアである柴山ヘッドコーチらしく、そのスタイルはオフェンス重視。今シーズンはさらに、得点を取ることに振り切っている。無意味なピック&ロールをしようものならば「必要ない」と一喝し、シンプルなバスケで魅せる。「オフェンスは好きにやって良い」が、そのためにも「責任を持ってディフェンスとリバウンドはがんばること」を課している。
「小さいからこそペイントアタックし、高確率でシュートを決められなければ、簡単にカウンターを喰らってしまう。前半は17点をトランジションでやられた。それでも前半は7点差(37-44)だったので、そこを半分でも抑えられていればリードして終えられていたかもしれない。オフェンスが好きだから、それが終わるとまださぼってしまう」
強度の高い本物のディフェンスを味わったからこそ、白鷗大学との差を痛感させられた。これまでもトーナメントでは1部リーグのチームと対戦してきたが、前半に良い勝負ができれば上出来だと褒めていた。しかし、今年の白鷗大学との敗戦はこれまでと違い、「悔しいという気持ちが芽生えたことが僕にとっての進歩かもしれない」という柴山ヘッドコーチにとっても刺激的な機会となった。