2年前、日本一になった白鷗大学だが、昨シーズンは4つの大会(春のトーナメント、新人戦、秋のリーグ戦、インカレ)を一度も優勝できないまま終わってしまった。インカレではそれまで3年連続決勝に進み、2年前はようやく日本一に立ったが昨シーズンは準決勝で敗れ3位に終わっている。リベンジに燃える新シーズンがはじまった。
第52回関東大学女子バスケットボール選手権大会(以下トーナメント)では、3年ぶりにベスト4進出を果たした。「『今シーズンは勝ちに行く』と新チームがはじまったときから取り組み、まずはこの大会での優勝を目指してチーム作りをしてきました」と三木里紗キャプテンは引っ張る。準々決勝の松蔭大学戦は92-51で快勝し、決勝リーグ進出を決めた。「ベスト4に入り、ここからが本当の勝負」と臨んだが、三つ巴の2勝1敗となり、ゴールアベレージの差で3位に終わる。しかし、優勝した筑波大学には延長の末、85-77で勝利。疲れているはずの延長戦は、12-4と大きなリードを奪ったことが鍛えてきた証でもある。
気持ちでカバーできるプレーを一番がんばるキャプテン
「昨シーズンとほぼメンバーが変わっていない分、これまでの課題点に対して一人ひとりがどれだけ意識を高く持ち、精度を高くできるかどうかを突き詰めています。インサイドはサイズがあり、ガードやフォワードは経験もあるのでメンバーは揃っています」と三木キャプテンは白鷗大学の強みを上げた。
4年生になった三木選手自身は、「バスケットの上手さは下級生に敵わない部分もたくさんあります。でも、技術面ではなくリバウンドやルーズボール、ディフェンスなど気持ちでカバーできるプレーは、チームの中で一番がんばれるような選手を目指しています」と仲間たちを生かすためにもやるべきことは明確になっている。
日本一になった2年前、当時の上原もなみキャプテンや林咲希選手(JX-ENEOSサンフラワーズ)の4年生たちが黙々と練習に励み、その背中を見せてチームを引っ張っていた。三木選手が目指すキャプテン像とは?
「もちろん背中で見せる部分もありますが、今は下級生の方がしっかりしています(笑)。学年関係なく、お互いが思っている意見を言い合える仲です。軸丸(ひかる/3年)や佐坂(樹/3年)はいろんな意見を言ってくれるので、こっちが気付かされることも多いです」
昨シーズン、星香那恵選手(日立ハイテククーガーズ)も仲の良さを長所として挙げており、今シーズンも変わらぬチームワークで勝利を目指す。
「ずっとリバウンド、リバウンド、リバウンドとヘッドコーチには言われています。まずはディフェンスをがんばって、しっかりリバウンドを獲って、どれだけブレイクを出せるかを突き詰めていきたいです」とこれまでと変わらぬスタイルをしっかりコートで表現すれば、自ずと頂点に近づくことは分かっている。トーナメントを制することはできなかったがベスト4に返り咲き、幸先の良いスタートを切った。
ドゥエイン・ケーシーヘッドコーチ直伝、NBA仕込みのきついメニュー
白鷗大学女子バスケ部一行は、春休みにカナダ・トロントへ行き、NBAラプターズの試合を観戦。そのラプターズのドゥエイン・ケーシーヘッドコーチは、1991年から積水化学リベルテという女子チームを率いていた(後に男子・いすゞ自動車リンクスのヘッドコーチを歴任)。ケーシーヘッドコーチの下で、アシスタントコーチを務めていたのが、白鷗大学の佐藤智信ヘッドコーチである。言わば師弟関係にあり、2016年夏にはケーシーヘッドコーチを白鷗大学に招き、クリニックを開催するなど今なおその交流は深い。
トロントでは周りにNBA選手がウォームアップしている中、上田祐季選手がそのコートで3Pシュートを決めて見せた。もちろんケーシーヘッドコーチに直接教わる機会もあったスペシャルなトロントツアーは、うらやましい限りである。
NBA自体にあまり興味はない三木選手だが、「ディフェンスの迫力が本当にすごくて、何よりも速かったです」と目指すべきスタイルの最高峰を目の当たりにしてきた。さらに、ケーシーヘッドコーチ直伝の練習では多くの発見があった。
「ディフェンスの意識がさらに高くなりました。ディフェンスを徹底すれば勝つことができるという自信がすごくつきました。ディフェンスをがんばってブレイクを出すことが自分たちの持ち味なので、さらに突き詰めていきます」
帰国後も直伝メニューは継続している。しかし、その練習があるたびに「あぁ、来たかぁ〜」と声を漏らしてしまうほど”きつい”らしい。
遠い存在になったWリーグや日本代表で活躍する同期メンバー
三木選手は女子U16日本代表から世界と戦ってきた経験の持ち主である。当時の仲間には赤穂さくら選手(デンソーアイリス)や西岡里紗選手(三菱電機コアラーズ)がおり、飛び級で入ったU17世界選手の先輩には馬瓜エブリン選手(トヨタ自動車アンテロープス)などWリーグで活躍する選手も多い。その仲間たちは日本代表にも入り始めており、東京オリンピックを目指している。
「本当にすごいなぁって思います。遠い存在になってしまいましたね。意識の高さはすごいし、本当に尊敬します。2年前のユニバで準優勝になった試合もそうでしたが、仲間たちの活躍がすごくうれしいです。私自身は先ではなく、今このチームに懸けています」
卒業後もバスケを続ける意向は見せたが、トップリーグは諦めているようだった。
「もしかすると高いレベルでバスケットに専念できるのも、これが最後になるかもしれません。だからこそ、この最後の1年に懸けている思いがあります。全てを出し切ります」
悔いなく、全てを出し尽くし、頂点を目指すラストシーズン。その活躍次第では、さらに高いレベルへ進む道を切り拓く可能性も十分ある。
白鷗大学女子バスケットボール部
関東大学女子バスケットボール連盟
文・写真 泉 誠一