第52回関東大学女子バスケットボール選手権大会(以下トーナメント)は、筑波大学が優勝(11年ぶり13回目)した。昨シーズンよりチームを率いているのは、柏倉秀徳ヘッドコーチ。田臥勇太選手(栃木ブレックス)や五十嵐圭選手(新潟アルビレックスBB)と同い年であり、三菱電機(現・名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)などトップリーグで競い合ったポイントガードである。現役中から筑波大学院へ通い、引退後の準備をしていた。2015-16シーズン、NBDL(下部リーグ)の山形ワイヴァンズで現役を終えた後、そのまま同校女子バスケ部のアシスタントコーチとしてセカンドキャリアがスタート。2017年よりヘッドコーチを任され、2年目の最初の大会で優勝という結果を残した。筑波大学のアシスタントコーチには元富士通レッドウェーブの中畑恵里さんが支えており、ベンチも注目である。
難しいことにチャレンジさせる指導法
「今の女子日本代表もフルコートでどんどんプレーしていますので、そこは大学生もしっかりと取り入れていけば、上につなげることができると思っています」
フルコートディフェンスでプレッシャーをかけ、ボールを奪っては速攻を仕掛ける筑波大学も、世界に通用する女子日本代表のスタイルを踏襲している。新シーズンへ向け、重点的にディフェンスを強化してきた。
「ディフェンスは好不調がないですし、5人が協力しなければならず1人でも休めば他の4人に迷惑がかかるというコンセプトで強化しています。チームで戦うためにも、まずはディフェンスが大事になります」
チームディフェンスが確立できれば、自ずとオフェンスでも呼吸が合ってくる。身長で劣るからこそ、フルコートを基本にオフェンスでもディフェンスでも連動して動くチープレーを求めていた。
ヘッドコーチ自身のトップリーグ経験を生かし、「まだ試行錯誤していますが、難しいことにチャレンジさせるように指導しています」。その課題に対し、「練習でも試合でも意外と対応できる選手が多い」と驚かされていた。女子のトップチームにいれば、自ずと世界が視野に入っている。5月18日からはじまる日韓学生定期戦『李相佰盃』では、アシスタントコーチを務め、自らも世界と戦える機会を得た。選手たちへさらなる難問を与えることは、ヘッドコーチにとってもチャレンジである。
選手時代と比較し、「コーチの方が断然大変ですよ」と即答した柏倉ヘッドコーチ。
「瞬時にこうして欲しいと思っても、そう簡単には動いてもらえないギャップを感じています。ただ、その中でもキャプテンの高辻(真子)なんかはミニバスからずっと日本一になっているだけあり、非常にバスケIQは高いです。僕の言うこともすぐに理解してくれますし、うまくコートで体現してくれているので僕自身が助けられています」
藤岡さんに追いつけるようにがんばりたい
大会MVPを受賞した高辻真子選手。2014年、桜花学園が高校3冠を達成したときのキャプテンである。日本一の高校出身であり、仲間やライバルたちは卒業と同時にWリーグへ行くケースも多い。常に日本一にいた高辻選手にとって、高校時代の方が高いレベルでバスケをしていたのではないか?「桜花のときはみんながすごかったから勝てていただけで、自分はまだまだです」と謙遜する。高校と大学の相違点として、フィジカルとシュートの精度を挙げた。もう一つ、大きな違いがあった。
「高校では知ってる人たちとの対戦が多かったですが、大学に入ると知らない選手も多かったです」
常に全国トップクラスとの対戦で鍛練を積んでいた高校時代だが、桜花学園の相手は自ずと決まってくる。そこで活躍したトップ選手たちは、当然のようにWリーグへ進んでいる。しかし、東京医療保健大学を筆頭に、高校時代は全国大会への出場経験がなくても、素晴らしい素材はいくらでもいる。新たなライバルの出現に、「もっと個人としてスキルアップしなければいけないです」と危機感を感じながら、日々取り組んできた。
柏倉ヘッドコーチからは「頭を使え」と言われ、状況判断の向上を実感している。それ以外にも、同じポジションだったヘッドコーチから学ぶことは多い。
「まだ試合ではそれほど出せていませんが、技術的なことをいっぱい練習では教えてもらっています。ヘッドコーチもポイントガードだったので、試合の組み立て方やピックの使い方を教えてもらうことができ、ガードとして成長できています」
キャプテンとしては、「声を出すことを一番意識しています。また、言うだけではなくプレーでもしっかり後輩を引っ張っていきたいです」。かつてのキャプテン、藤岡麻菜美選手(JX-ENEOSサンフラワーズ/女子日本代表)は憧れの存在であり、筑波大学へ進むきっかけになった。高辻選手は卒業後、Wリーグ入りを見据えており、「藤岡さんに追いつけるようにがんばりたいです」というラストイヤーがはじまった。
関東大学女子バスケットボール連盟
筑波大学女子バスケットボール部
文・写真 泉 誠一