スコアは59-63。ディフェンディングチャンピオンの京都精華学園にわずか4点及ばず、5年ぶりの優勝はならなかった。しかし、岐阜女子がこの冬を最も沸かせたチームであったことは疑いようもない。
12月26日の準々決勝、第4クォーター残り8分15秒の時点でこの試合最大の21点差をつけられた岐阜女子が起こした奇跡は、その相手が桜花学園だったという点もインパクトを強くした。チームは第3クォーターまでに30点しか取れなかったが、第4クォーターは31得点。残り3分を切ってもまだ14点あったビハインドをひっくり返した立役者は、第4クォーターの10分間だけで3ポイント7本を含む25得点、試合を通しては37得点を叩き出した絈野夏海だ。
安江満夫コーチによれば、中学時代の絈野はこれといった実績もなく、「特筆すべき選手ではなかった」という。その絈野がライバル・桜花学園を撃破する原動力となった要因は、元来持っていたシュートセンスと吸収力の高さ、そして努力家であることだ。絈野本人が自身を「性格上、コツコツやっていくタイプ」と認め、「安江先生が大切にしている基礎・基本の部分を誰よりも意識して練習してきた」と自負。不断の努力が、絈野を高校ナンバー1シューターの座に押し上げた。そんな絈野を、安江コーチは元メジャーリーガー・イチローを引き合いに出し、「努力を積み重ねる天才」と評している。
絈野は決勝でも京都精華学園を苦しめた。準々決勝と同様に、チームの得点の半分以上となる31点をマーク。3ポイントは8本炸裂させ、24本が最高記録だった大会通算成功数を27本に更新した。この決勝も一時は16点差がついたが、第4クォーター残り4分20秒には2点差まで詰め寄った。絈野を中心とした後半の追い上げは見事の一言。絈野も「2位という結果には満足はしてないですけど、このチームでしっかり最後まで戦った結果が2位なら、胸を張っていいかなと思います」と仲間の存在に感謝した。
キャプテンとして過ごした1年は、キャプテンをやったことのある者にしかわからない苦労もおそらくあっただろう。インターハイでは、やはり京都精華学園と2回戦で激突して敗れ去った。全国優勝の経験もある強豪校を引っ張る存在として、早すぎる敗退に責任も感じていたようだ。しかし、周囲の支えを強く感じられる中で、キャプテンとしての務めを果たそうとしたことが、冬の準優勝という結果につながった。その言葉には、謙虚さと同時に、自身の努力に対する確信も見え隠れする。
「夏が一番どん底に落ちたときで、そこから自分たちがチームをどう立て直すかというので、本当にバチバチしましたし、チームはほぼ崩壊に近かったんですけど、たくさんの方に支えていただいて自分たちもチームを立て直すことができました。そういう方々がいらっしゃったので、最後までバスケットができた。1年間辛いこともありましたし、自分がキャプテンで良かったのかなって思いますけど、最後までキャプテンらしいプレーはできたんじゃないかなと思います」