「このプレーヤーはこうだからという認識ではなく、これもできるんじゃないか、あれもできるんじゃないかというアプローチの仕方をすごく大事にしようと思ってます。全員が同じ練習をできるように、大きいから小さいからということではない練習をもっと積み重ねていかないといけないと思います」
その中で小滝コーチは「今日の試合でも、例えば7番の綱島(佑太朗)は左が苦手だったのが、左に行く勇気を持つことができた。チーム全体を見ても、もっと良くなる部分がいろんなところに感じられた」と、試合中にも選手たちに可能性を見出していた。だからこそ、「大会を通して上手くさせてあげたかったという後悔もありますね。やっぱりゲームが一番成長できるので」とこの日の試合運びを厳しく自省する。
そんな若い世代の可能性を広げることに腐心する今の日々を、「すごく楽しい生活で、選手たち以上に楽しさを味わわせてもらってます」と小滝コーチは前向きに受け止める。「カテゴリーに馴染んでいくという言い方は、他の高校の先生にとって失礼かもしれないけど」と前置きした上で、「子どもたちと一緒に自分もコーチとして成長していって、いろんなアプローチが早くできるようになりたいなと感じてます」とワクワクした気持ちで今の職責と向き合っている。
同じコーチ業でも、相手が変われば難易度も変わるが、難しい分だけやりがいのある仕事でもある。高校のコーチとしては新米の部類でも、小滝コーチが目指すものは既に明確になりつつあり、そこに感じられる喜びも日々大きくなってきている。何より、そのやりがいのある仕事に母校で取り組めるということが、小滝コーチにとって重要なことだ。
「やっぱり子どもたちって目先のことにとらわれがちで、目の前のことができるかできないかで判断しちゃうんですが、コツコツやることが一番だよということを伝えられたらと思います。やっぱり日本一にたどり着きたいので、そのためにどういうプロセスが必要なのか。来年の決勝まで、あと367~8日ありますよね。来年の今日までではなく、それを1日2日と超えていけるチームを作っていきたいですし、先輩たちはそれを期待して、後輩たちはその気持ちを受け継いでやっていってくれると思います。数多くゲームをさせてあげて、彼らがそれを通して成長して、幸せになってくれることが一番楽しいことです。それができる環境が、自分にとっては母校だったし、ここはそういう生徒たちを生み出せる環境だと思ってます」
はたして小滝コーチはどのようなチームを作り、どのような選手を輩出していくのか、そして、東海大諏訪にどのような歴史を刻んでいくだろうか。
文・写真 吉川哲彦