「リーグ戦が終わってからインカレまでの1ヶ月間、全員ボールをもらったらリングに向かって攻める、攻め気を持って全員が点数を取りに行くというのを目標に練習してきました」と江頭が話すとおり、拓殖大学戦のラストプレーで見せた西のアタックこそ、早稲田大学が築いてきた新たなスタイルだった。唯一の4年生である中山桂は、後輩たちが少しでも消極的になれば、掲げた目標をもう一度意識させてチームを盛り立てる。だからこそ「ボールを持ったら優有に返すのではなく、自分で攻めることをみんなが体現できていました」という江頭は21点を挙げてチームを引っ張った。
江頭は試合の局面を察知しながらいろんなところに顔を出し、チームを支えるバランサー。171cmながら身長差ある大きな相手に対してゴール下で体を張って守り、オフェンスではボールがないときこそ動き回ってスペースを確保する。江頭は3年生だが、コート上では最上級生になる時間帯も多く、常に声をかけてチームを統率していた。そのリーダーシップについて、「自分も昨年まで先輩たちに『リリもっと行っていいよ』『ナイスインだったからもっと続けていいよ』と励ましてもらえたことがすごくうれしかったです。同じように、後輩はやっぱり緊張もすると思うし、かたくなっている子にはポジティブな声かけをするように意識していました」という支えがあったからこそ、下級生たちの活躍につながっていた。
リーグ戦の最終戦で拓殖大学に勝ち、自信を持って迎えたインカレ準々決勝。「絶対にみんなが勝てると思っていたし、勝つしかない、勝つぞという強い気持ちで臨み、本当に勝てると思っていました。最後の最後までみんなで戦い、絶対に勝てると思っていたからこそもう本当に悔しいぃ。もう本当に悔しいという気持ちが大きいです」とそれまで冷静に振り返ってくれた江頭が、大きな瞳をさらに開いて胸に秘めていた感情を露わにする。早稲田大学の主力メンバーは来年も残るからこそ、ポジティブな敗戦だったと言える。
「他のチームは結構4年生が抜けて作り直すと思いますが、自分たちは1人だけなので本当に来年はチャンスだとすごく思っています。でも、ここで『行けるっしょ』みたいな感じにはならず、『絶対に日本一獲ってやる』そういう強い気持ちが大事です。どこにも負けない強い気持ちを持ち続けて、それに対して波があったり緩んだりすることなく、今この時点からもうずーーーっと私たちは『日本一になるためにがんばるんだ』というその芯をぶらさずに1年間継続して取り組んで行くこと。本当に来年こそ、日本一の景色を見たいなと思っています」
文・写真 泉誠一