一方で、女子を制した精華女子の大上晴司コーチは表情も晴れやかだった。それもそのはずで、同校としては4年ぶり(3大会ぶり)のインターハイ出場となる。2年生エースがケガで出場できなかったものの、3年生を中心に他のメンバーがそれぞれの持ち味を発揮。何より4月下旬に合流した、精華女子としては初となるナイジェリアからの留学生、#44 アキンデーレ タイウォ・イダヤットの存在が大きかった。
「全国はもちろん、福岡県内でもビッグマンが私たちのウィークポイントでした。彼女が入ってきたことで、私たちが目指すスタイルに、高さも加えた形でさらに上を目指したいと考えています」
4月下旬にはそう語っていたが、来日後に出場したインターハイ予選の中部ブロック大会では、投入後5分で、コートのなかから自ら交代を志願するほどだったという。
しかし、この日はタイムアウト中にも翻訳アプリを使って、チームメイトに「思い切りシュートを打って。私がリバウンドを取るから」と告げていた。その言葉どおり、東海大学付属福岡の留学生、チャラウ・アミにリバウンドを支配させず、むしろタイウォ(チーム内ではそう呼ばれているらしいので、ここではそれに従う)のリバウンドが光って、4年ぶりの夏の戴冠である。
もちろん彼女が中心のチームを作ろうというのではない。大上コーチは言う。
「タイウォをメインにというのではなく、彼女を入れることによって、いかに他の選手の良さを引き出していくか。ということがやっぱり大事なことかなと思っています」
そのイメージも思い描かれているのだろう。大上コーチの表情はそういうものだった。
インターハイへあと一歩も……
敗れたものの、福岡大学附属大濠にとっては大きな落胆を抱えることのない決勝戦だった。むろん悔しさはある。片峯聡太コーチが試合後に口にした敗因はリバウンド。スカウティングのとおり福岡第一のやりたいことは、おおむねやらせなくはできたが、ディフェンスリバウンドで後手を踏み、失点につなげてしまった。
ただ、今大会の福岡大学附属大濠には204センチのビッグマン、渡邉伶音がいなかった。ゴールディンウィーク明けに故障し、現在は「やれと言えばやれる状態だし、本人も出たがっていた」ほどである。しかし、怪我の内容を考えたとき、今後に響く可能性もある。今月下旬からハンガリーでおこなわれる「FIBA U19バスケットボールワールドカップ2023」に出場するU19日本代表にも選出されている。今大会で症状を悪化させれば、U19ワールドカップへの出場さえ不透明になるし、その先の未来を含めた片峯コーチの英断で、今回の予選は出場を回避させたというわけだ。