東海大学の存在が大会にもたらしたもの
一方、決勝戦で敗れた東海大学は秋のリーグの覇者であり、昨年のインカレの王者。高校の舞台を沸かせた有力選手が揃うチームは『スター軍団』とも呼ばれていた。しかし、そう呼ばれることは他のチームにはない『圧』を背負うということだ。大会前の下馬評でも「東海大は勝ってあたりまえのチーム」、「どうせ東海大が優勝するんだろう」などという声も聞かれた。が、本当にそうだったのだろうか。ケガで長期間チームを離れていたエースの大倉颯太が復帰したのは大会間際。アグレッシブなプレーで停滞した時間を切り裂く坂本聖芽は初戦で骨折し戦線離脱。チーム状況は万全とは言い難かった。それでも頂上を目指す多くのチームは皆『打倒、東海大』を掲げてぶつかってくる。大東文化大学との2回戦(65-63)に始まり、準々決勝の中央大学戦(69-65)、準決勝の専修大学戦(79-71)と一時は奪った二桁リードを後半一気に縮められる苦しい試合が続いた。
渾身の3ポイントシュートであきらめない姿勢を貫いた中央大学の清水宏記は「東海大を相手に自分たちは失うものはないから思いきってシュートを打てた」と言う。東海大学という大きな山を崩すために “挑戦者たち” は点差が開けばなおのこと躊躇なくシュートを放ってくる。それが一発勝負のインカレの怖さだ。3試合連続苦しみながらそれでも勝ち切るところが東海大学の強さとも言えたが、決勝の舞台では白鷗大学の気迫に押され、その勢いを押し返すことは叶わなかった。試合後の記者会見は当然重い空気の中で始まったが、その中で「この1年間このメンバー、このチームで戦えたことに誇りを持っています」と前置きした後「今日は負けてはしまいましたが自分は次につながる試合だったと思っています」と続けた佐土原遼の言葉が印象的だった。「インカレで勝つことの難しさ、厳しさを痛感できたことは必ず来年のチームにつながるはずです」。
勝負に『勝って当然』はない。しかし、「勝って当然」と言われ続けた東海大の存在が数々の熱戦を生む土俵になったことは間違いないだろう。
初優勝を勝ち取った白鷗大学に心から祝福の拍手を送るのと同時に、『あきらめないバスケット』を見せつけた敗者たちにも大きな拍手を送りたい。今年のインカレはそんな気持ちになる7日間だった。
インカレ2021・第73回全日本大学バスケットボール選手権大会 特集
インカレ2021・男子優勝:白鷗大学
「スター軍団に勝ってやろう」と闘志を燃やし、逆転勝利でインカレ初優勝に輝いた白鷗大学
文・クリスマスツリー写真 松原貴実
写真 泉誠一