勝利のおまじない「ワクワクが最強」東京医療保健大学が5連覇達成(前編)より続く
「失敗を恐れずにどんどんチャレンジできるようなりました」木村亜美
インカレ(第73回全日本大学バスケットボール選手権大会)5連覇を達成した東京医療保健大学。キャプテンの#12 木村亜美が言うように、「自分自身がなりたい理想やなりたい自分を思い描いて、日本中を元気にしたいという気持ちがあります」というマインドを持ってコートに立つ。それによって苦しい状況も笑顔で乗り越え、ポジティブなエネルギーで勝利をつかんでいった。
2年前まで恩塚亨監督は、声を荒げるタイプの指導者だった。普段は温厚であり、物腰も柔らかくソフトな口調で接してくれるが、いざベンチに立って試合がはじまると180度性格が変わったように恐い姿を見せる。恩塚監督の指導方針が変わる前までは、「失敗したらどうしようとか、ミスしたら交代させられるかなと思ってプレーしていました」という木村は、いつもベンチの方を伺いながら怯える仔犬のような表情でプレーしていた。
しかし、ポジティブな指導方針に変わったことで、「失敗を恐れずにどんどんチャレンジできるようなりました。それが、自分たちの良いマインドとなり、今はバスケットがすごく楽しめています」という効果が得られている。何よりも、コートで見せる表情が格段に明るくなった。
笑顔でプレーできるようになったのは、#25 伊森可琳も同じである。指導方針が変わった昨年から、恩塚監督には「試合中の顔について、結構言われてきました。言ってしまえば、楽しそうに見えない…」。コート内で何をすべきかを考えすぎてしまっていたのが原因であり、「顔もこわばって、バスケットを楽しめていない部分がありました」と振り返る。3年生となった今年のインカレでは笑顔が見え、プレーに余裕が生まれたとともに、まわりに声をかけて劣勢を跳ね返していた。
「今年は自分の顔つきから変わろうと思って臨み、それによって自分の気持ちも変わっていきました。次第にまわりにも目が行くようになって、それでコミュニケーションの部分もうまくできるようになりました。そこの気持ちの差は大きいと思います」
伊森に5連覇に対するプレッシャーがあるかと聞けば、「4連覇したのはもう去年のことなので、特にないです」とあっさり否定された。それほど、頼もしい存在へと変貌を遂げた。
選手同士のコミュニケーションについて、木村も成長を感じている。
「恩塚さんが代表活動でいない時期もあったので、そのときに練習の雰囲気から自分たちで話し合って改善していきながら、チームを作っていったことが自信にもなっています。恩塚さんがオリンピックから帰って来られて、マインドの話などをされたことで、今まで取り組んできたすべてがしっかりはまった感じがしています。それによってさらに自分たちの成長にもつながっていると思っていますし、そこが大きいです」
2年生の#77 岡本美優は「きつい状況とか苦しい状況でもみんなで声を掛け合って、最後まで楽しく試合ができました。自分たちで主体的になって試合を作ることができたので、すごく良い試合になったと思います」というチーム力が、様々な困難を解決してくれた。
このインカレ期間中、恩塚監督がついつい名前を叫んでしまったのが、#5 パレイのりこである。2年前まで厳しく指導されていたが、当の本人は「自分がボーッとしているときに恩塚さんが活を入れてくれることで、自分の本来持っているパフォーマンスを出させてくれます」と、今は目覚ましのようにしか感じていない。逆に、他のチームの指導者が声を荒げているのを見て、東京医療保健大学との違いを実感する。