2度のオーバータイムを制し決勝に挑んだ筑波大
余力を残して決勝へコマを進めた東海大に対し、筑波大は苦しんで、苦しんで最後の舞台に上がってきた。準々決勝(専修大戦)残り0.5秒、50-50で相手にフリースローを与えてしまった場面では選手たちの頭に「敗戦」の文字がよぎったのではなかろうか。が、専修大がこれを2本とも落としたことで絶体絶命の危機から生き返り、延長戦を64-60で制し準決勝へ。しかし、この一戦で負傷したポイントガードの菅原暉(4年)は松葉杖をついて会場を去り、心技の要を欠いた準決勝(大東文化大戦)はまたもや延長戦にもつれ込む死闘となった。
前日の試合で37分近くプレーしたエースの山口颯斗(4年)、同じく39分近くゴール下を支えた井上宗一郎(3年)はこの日もスタートからアグレッシブにゴールに向かい、菅原に代わってゲームメイクを任された野本大智は「昨日の試合ではいいパフォーマンスができなくて迷惑をかけた分、今日は4年生らしいプレーでチームを牽引する」という覚悟を持ってコートに立った。大東文化大は先のオータムカップで競り負けた相手であり、だからこそ「昨日の疲れを言い訳とせず必ずリベンジを果たす」が全員の合言葉になったという。62-59で連続のオーバータイムを勝ち取った後、「明日は総力戦になりますが、全力を尽くすのみ」と語った吉田健司監督の横で「あと1つ!明日は八村をボコボコにしてみせます」と言い切った井上の笑顔が印象的だった。
結果的に頂点には手が届かず、2連覇の夢もついえたが、満身創痍の状況の中、コートの中には「頑張ろう!」「頑張るぞ!」と互いに掛け合う声が響き、全員で最後まで走り抜いた姿は決勝を戦うチームにふさわしいものだったと言える。残り30秒、学生最後のコートに立った菅原はこみ上げる涙をこらえきれなかったが、試合後の会見で見せた顔に暗さはなかった。
「自分は1年のときから試合に使ってもらって、バスケに対する考え方も変わっていったと思います。吉田先生の引き出しは本当に豊富でそこからたくさんのことを学んだ4年間でした。キャプテンにはあまり向いていないタイプの自分がキャプテンになって、コロナのこともありこの1年はすごく苦しかったです。けど、その中でキャプテンとして何ができるか、何をすべきかをずっと考えてきました。本当にずっとずっとチームのことを考えてきたつもりです。苦しかったですが、その中で考える力を得ることはできたような気がします。この〝考える力〞はこれからも必ず自分の役に立ってくれるはずだと思うので、日本のトップガードになるという目標に向かってまた頑張っていきたいです」