気持ちを切らさず、吹っ切れたプレーで勝利に導いた八村阿蓮
勝利した東海大学の佐土原遼がチームハイの18点、続く16点を挙げたのが八村阿蓮である。その八村は準決勝では22点をマークし、「見ていて落ちる気がしなかった」と陸川監督が言うほど好調だった。しかし、2回戦に足を打撲するアクシデントがあり、「準々決勝までは調子が上がらず、自分らしいプレーができずにいました」と苦しいインカレでもあった。
八村に対し、「リバウンドだけ頼む」と陸川監督は簡潔な指示しか出していない。それが準決勝と決勝では、オフェンスでも存在感を見せる。「ケガをしても気持ちが落ちることなく、良い集中を保って試合に取り組むことができました。この経験ができたことも貴重だったと思っています」とピンチをチャンスに変え、精神的な成長を遂げている。
梅丘中学時代の仲間であり、その後もライバルとして切磋琢磨してきた筑波大学の井上宗一郎の存在も欠かせない。勝者となった八村から見た井上の印象は以下のとおりである。
「宗一郎も年々レベルアップしていて、ポストプレーの上手さやリバウンドの強さがあります。僕としても負けないようとずっと意識しています。今日の試合は結構やられてしまって、僕のファウルトラブルもありました。でも、(昨年の関東大学リーグ戦以来)約1年ぶりに対戦できたので、楽しかったです」
対する井上は「一番負けたくない相手だったので、絶対に勝ってやろう」と気合いを込めて臨んでいた。試合を終え、「やっぱり、なかなかうまくいかないもので、阿蓮には最初の方で流れを作られてしまった。そこは自分のせいでもあります。来年は4年生になり、ラストシーズンでもある。このまま負けて終わりたくないので、絶対に来年は優勝したいです」とさらなる闘志を燃やす。
昨今、大学バスケ界のインサイドは身体能力が高い留学生が支配している。その中において、日本人ビッグマンを擁する2チームが決勝に進んだことは頼もしく、来年もこの二人のマッチアップを楽しみにしたい。
常に声をかけ続けた大倉颯太の責任感
八村と井上だけではなく、この両チームは3年生にタレントが揃っている。最上級生となる来年は、さらに白熱した戦いになりそうだ。優勝会見にも関わらず、「悔しい」と言っていたのは東海大学3年の大倉颯太である。「筑波大学のチェンジングディフェンスにちょっと手こずってしまい、我々の頭脳である大倉颯太がすごく悔しがっていました」と陸川監督も話すほどだった。
大倉は1年次から八村とともに先発で起用され、2年前の決勝では17点のチームハイの活躍で優勝を経験し、自信を得ることができた。しかし、昨年は準々決勝で専修大学に敗れ、悔しさを味わう。その後、特別指定選手として千葉ジェッツでプロを経験したことで大倉は大きな成長を遂げ、2度目の優勝へと導いた。