来年の目標は、必然的に5連覇となる。昨年と同様に不安があるかもしれない。しかし、崎原はすでに答えを知っていることを利点として挙げ、後輩たちにメッセージを送る。
「今年と同じことをやっていても勝てないと思うので、自分たちの良さやどう工夫をしたらまた次に勝てるのかを考えていく必要があります。とにかく自分に自信を持って、情熱を持って取り組めば、何ごともできることはもう分かったはずです。その気持ちで来年もがんばって欲しいです」
バスケを楽しみ、スーパーヒーローになれるマインドで5連覇へ突き進むだけである。
『今までの実績などは関係なく、私がこうなりたいということを素直に表現する勇気』
恩塚監督が指導方針を変えたきっかけは、新型コロナウィルスの感染拡大だった。それによってできた時間で70冊以上の本を読んでインプットした。それは選手たちも同じであり、「自分たちで学びを得たことで、一人ひとり何が必要かを探しながら生活する習慣が身につきました。それによって、練習への取り組み方に対する意識も変わりました」という崎原もまた変わることができた。恩塚監督は、東京医療保健大学をスーパーヒーローにするために、さらなる改革に着手していく。
「ダメだから練習するとかいう考えをなくして、日本の子どもたちや大人も含めて、こんな自分になりたいということだけを見て生きて行くような文化を発信していくことを今後は目指したいです。今までの実績などは関係なく、私がこうなりたいということを素直に表現する勇気と、それをみんなが認めて背中を押せるような空気というか文化を作っていくモデルチームになりたいと思っています」
4連覇を果たした東京医療保健大学に対し、この4年間のインカレで白鷗大学は一度も勝つことができなかった。その悔しさを全て知る4年生の神﨑璃生は、「同じことをやっていては通用しない相手。ちゃんとアジャストしてくるすごいチームです」と讃える。神崎が入学する前年、優勝した白鷗大学に敗れたのは東京医療保健大学の方だった。恩塚亨監督は、スーパーヒーローであるイチロー氏の明言を借りて、白鷗大学の存在をこう表現する。
「僕らの可能性を引き出してくれる素晴らしいチームです。だから、僕らも彼女たちの可能性を引き出せるチームになりたい」
今後も切磋琢磨し続ける東京医療保健大学と白鷗大学のライバル関係が、大学女子バスケ界を高いレベルで牽引していく。
最後に、26点を挙げてMVP(最優秀選手賞)を受賞した赤木のコメントを紹介したい。
「あまり実感はないですけど、自分がやるべきことをこの試合での瞬間瞬間で、チャンスを探し続けていたからこそ得点にもつながったし、チームメイトがいたからこそこのMVPがあると思います。4年間指導してくださった恩塚さんには感謝の気持ちでいっぱいです」
文・写真 泉誠一