今なお新型コロナウィルスの感染が拡大する中、第72回全日本大学バスケットボール選手権大会(インカレ)が開幕した。検温とともに顔認証による入退出を管理し、試合中のベンチメンバーはマスク着用、選手交代時は手指消毒を欠かさない。徹底した予防対策を現場では行っている。しかし、学内での感染者が出るなど、男女計4校(男子:富山大学、大阪学院大学、男女:広島大学)が、やむなく棄権することとなった。
第1試合に登場した徳山大学の所在地は山口県。今年4月、全国的に発令された緊急事態宣言は5月14日に解除された地域なのだが、「夏まではチーム全体としての練習をすることができず、個人練習だけでした。ようやく全体練習に取り組めるようになったのは9月頃からです」と言うのはキャプテンの兼本拓也である。新型コロナの猛威に地域差はなかった。「今大会が出来ることに感謝をし、自分達らしいアグレッシブなプレーで会場を魅了します」が、今大会に向けた徳山大学の抱負である。その言葉どおり、思い切りの良いプレーで魅了されていった。
「前半は良いディフェンスができ、相手に流れを渡さないままリードして後半を迎えることができたんですけど…」と兼本が振り返るとおり、46-44で前半を終えた。中京大学に連続失点を許し、幾度となく引き離されそうになったが、粘り強くシュートを決め返してリードを取り戻す。しかし後半、一気に中京大学が流れを渡してしまい、第3クォーター終了時点で57-67と10点差をつけられてしまう。クォーター間やタイムアウト時には、「最後まで自分たちのバスケを出し切ろう」とチーム全員が声を掛け合った。第4クォーター開始早々、兼本の連続得点で61-67と2ゴール差に詰め、反撃開始。「全員が攻撃の意識を持って、最後までオフェンスに取り組むことはできたと思います」という兼本だったが、ディフェンスの部分で相手に上回れてしまった。
「第3クォーターで相手の勢いを止められず、その点差が最後まで尾を引いて、巻き返せない状況になってしまいました」と最後まで6点差が重くのしかかり、81-87で敗れた。兼本が在籍した4年間は、目標に掲げた『1回戦突破』を一度も果たせなかった。「この目標は受け継いでもらって、来年こそぜひ達成してもらいたいです」と3年生の具志堅颯や2年生のサインバヤル ドゥガルエルデネなど頼もしい後輩たちに託し、4年生はこれで引退となる。
普天間高校では全国大会に出場する機会はなかった兼本だが、徳山大学では4年連続インカレで戦うことができた。「大きな会場で試合ができたことは良い思い出になりました。これでバスケは終わりです」と悔いなくユニフォームを脱ぎ、次なる人生の扉を開く。
徳山大学のメンバーはガタイがエグい。ダイエット用語として用いられ、女子にとっては110など高い数値が称えられる『身長ー体重』の“スペック”で算出したところ、平均はピッタリ100。対する中京大学は104とやや軽い。徳山大学では、ウェイトトレーニングを課してはいるわけではない。「自分たちの代が、特に筋トレをする習慣がありました」と自主的に行った成果だった。4年生の平均は脅威のスペ98。さらに鍛えられたフィジカルモンスター兼本は94をマークし、卒業後は警察官になるそうだ。徳山大学、そしてバスケで培った体躯を、今後は地域の平和のために生かしていく。
文・写真 泉誠一