大差で負けたからこそ、明確になった部分もある。「練習中はいつも西尾さんに発破をかけられて、そこから気合いが入るような形になっていました。やっぱりコートでプレーするのは自分たちなので、西尾さんに言われる前に自分たちから練習を変えていかなければいけないです」と星野は言い、コロナ禍によって目標が見えずに集中力を欠いてしまったのも否めない。だが、ようやく実現できた公式戦を通じ、インカレへ向けて目を覚ますきっかけになった。
オータムカップ2020を通じて、「短時間でもやるべきことをしっかりやれば、自分たちの力になることは分かりました」と制限のある中での調整を経験することもできた。関東以外はリーグ戦が行われ、例えば関西学生リーグは11試合を戦っている。西尾監督は「関西などに比べて試合数が少なく、そこは不利になるかもしれない。その分、『日頃から練習のレベルを上げて行こう』と伝えている。試合数が少ないことを意識せずに、今日のファイナルの結果をしっかり受け止めて、インカレまでに仕上げていきたい」とここからが勝負である。
この試合で星野とマッチアップした東海大学の坂本聖芽(3年)は、中部第一高校時代のチームメイトだ。試合前、高校時代の恩師である常田健監督から「聖芽との戦いを楽しみにしてるよ」という連絡をもらった。
「意識してしまうと考えすぎてしまいますが、彼のプレーを動画で見ては自分もがんばらないといけないと思わされ、すごく刺激になります。自分自身を高めてくれる存在です」(星野)
旧友やライバルとコート上でしのぎを削り合える幸せをようやく実感できたオータムカップ2020は幕を閉じた。当たり前にあったことが、新型コロナウィルスの猛威により、なかなか思うように進むことができない今シーズン。だからこそ、日本一を決めるインカレへ向けて悔いなく戦うためにも、これからの約1ヶ月間は1日たりとも無駄にはできない。
文・写真 泉誠一