「インカレに行くことで見てもらえる機会が増える」明星大学 #29 新田嵐
シードで待ち受ける昨年の2部リーグ3位の東洋大学に挑むのは、同6位の明星大学だ。ここは接戦になるかと思われたが、予想外のワンサイドゲームで勝負は決まった。「自分たちの持ち味はドライブ」と新田嵐(4年)がいうとおり、立ち上がりから強気なアタックで流れを呼び込む。「誰でも良いからとにかく運べ」という柴山英士監督の指示の下、全員がトランジションの意識を高く持って攻め続けた明星大学が105-74で番狂わせを起こす。オータムカップ2020では、1部を含めても100点ゲームは明星大学が初となる。
「他のチームよりも練習期間は限られています」と新田は現状を明かす。コロナ禍により、週3回しか練習できない状況が今なお続く。「選手同士が声を掛け合って、今日の試合も強度を高くプレーできました」と制限がある中でも最大限の準備をし、勝利につなげていた。
シューターとして覚醒した岡田泰希(6本の3Pシュートを成功させて35点をマーク)、スピードで突破する加藤嵩都、リーダーシップを発揮する小さなリバウンドマシン福田晃平(13点/10リバウンド)ら、昨年から頭角を現した主力となる3年生たちがさらに成長していた。今シーズンは昇降格がなく、4年生になっても2部での戦いになってしまうのが悔やまれる。
4年生の新田はBリーグを目指す一人だ。この試合では16点を挙げ、シェッラ ママドゥ(4年)とのコンビで8アシストを記録した。練習時間も、試合数も限られる中だが、「インカレに行くことで(プロのスカウトに)見てもらえる機会が増える」とモチベーションは高い。ママドゥとの連係プレーは、練習中からBリーグを意識して取り組んでいる。
昨今はポジションアップがトレンドらしいが、172cmのポイントガードは大きな相手に対してスピードと技術で交わすことを常に考えて努力をしてきた。「小さくても富樫勇樹選手(千葉ジェッツ)や、桐光学園の先輩である齋藤拓実選手(名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)がBリーグでも活躍しています。確かにガードも大きい選手が増えてきましたが、あまり意識していません」と自らが定めた高いレベルに照準を合わせて突き進む。チーム目標であるインカレ出場、個人としてもプロ入りのチャンスを広げるためにも勝ち進まねばならない。
「社会に出たときの財産にするために」国士舘大学 #2 二村響
国士舘大学は元気の良い明るいチームだ。その中心にいたのが、昨シーズン限りで引退した元レバンガ北海道の松島良豪氏である。松島コーチのデビュー戦の心境については、後日あらためて紹介する予定だ。
昨年の2部リーグでは国士舘大学が4位、関東学院大学が5位、対戦成績も1勝1敗と拮抗する両チーム。第1クォーターを終え、25-10と一気に点差を開いたのは国士舘大学だった。しかし残り5分、関東学院大学は鈴木耀(3年)と丸澤樹(3年)が得点を重ね、65-62と3点差まで迫る。対する国士舘大学は、稲見紘平(4年)が2本の3Pシュートで突き放し、82-69でふたたび差を広げて逃げ切った。
国士舘はキャプテンの二村響をはじめ、4年生の活躍が光る。コロナ禍によって先が見えなくなったことで、早期引退した4年生が他のチームでは見られた。春のトーナメント、そしてリーグ戦も中止が決まったとき、「他の4年生はすごく落ち込んでいて、『もういいや』という雰囲気も出ていました」と二村は当時を振り返る。
「でも、そこで辞めて何が残るのかといえば、絶対に何も残らない。今後、社会に出たときの財産にするためにも、ここで辞めるのは絶対によくないと説得しました。もう一回、4年生がこのチームを引っ張って行こうという話をしました」
その言葉どおりの活躍を見せてくれた。二村自身は、「チームキャプテンである僕がチームの誰よりも声を出したり、戦う姿勢を見せたりしていかなければ、絶対にチームメイトはついてきません。誰よりもしゃべったり、ハードにプレーすることは常に努力してきましたので、モチベーションが下がることはなかったです」とチームを引っ張ってきた。
コロナ禍が影響し、4年生にとっては卒業後の進路にも支障が出ている。実業団でバスケを続ける道を模索していた二村だったが、軒並み大会が中止となったことで決断できず、今年でユニフォームを脱ぐこととなった。だからこそ、「この大会に懸ける思いは誰よりも強いです」と力を込め、チャレンジマッチに勝って、自身初のインカレ出場を目指す。そこにたどり着けば、また違う道が拓けるかもしれない。
オータムカップ2020|2部トーナメント
準決勝(11月3日)
明治大学 vs 国士舘大学
明星大学 vs 法政大学
文・写真 泉誠一