── 4年次にキャプテンを務めた内海選手は、以前「僕たちが入ったチームの中で1番大変だったのはリクさんだったと思います」と言っていましたが、いかがですか?
大変でしたよぉ(笑)。井上や佑宇はやんちゃだし、石崎は試合に負けると必ず敗因を追求しに来るしね。そのたびに考え、勉強し、コーチとして足りないものを模索し、振り返れば彼らを預かることで私自身が成長させてもらった気がします。
── 選手から刺激を受けたり、学ぶことも多いですか?
もちろん多いですよ。私は選手でもコーチでも人として上も下もないと思っています。コーチだから偉いなんてことは全くない。だから私は自分が失敗したら選手たちに謝ります。自分の力不足で負けた試合があればまず選手たちに謝る。ただ私の方が歳を重ねていますから経験は豊富。その経験から得たものを選手たちに伝えていくのはコーチの仕事です。選手によく言うのは「自分が行きたいところに連れていくのは自分だぞ」ということ。どんなにきついトレーニングでもやるのは自分。行きたい場所を目指して汗を流すのは自分。自分を律して、自分を動かすのが目指す場所に行ける唯一の道です。そう考える力を私は選手たちに付けさせたいんですね、そのためのサポートもコーチの大事な仕事の1つだと考えています。
── 監督の中には試合中に選手を怒鳴ったり、ミスをなじったりする方がいます。それも選手を鼓舞する手段の1つなのかもしれませんが、陸川さんは決して怒鳴らないし、怒りません。
当然ですが、選手だって調子がいいときと悪いときがあります。一生懸命やっても結果が出ないときもある。肝心なのはその子がベストを尽くしたかどうかということ。手を抜いたり、やる気がなかったらコートには出しません。コートに出ているのは、その子が一生懸命やろうとしているということですから、その子を怒る必要はないでしょ。ミスは本人が1番わかっているはずだからあとで反省すればいい。だいたい私自身反省することが多いですから(笑)。私はよく「チームはビッグファミリーだ」と言いますが、それで言うなら私はファミリーの父親。どんなときも息子たちの味方になる親父でありたいと思っています。
part5「大学はバスケットと生き方の土台を作る場所だと思う」へ続く
文 松原貴実
写真 吉田宗彦