九州と関東の差を痛感した1点差
ディフェンディングチャンピオンの東海大学は、初戦から苦戦を強いられた。結果は99-80と19点差をつけて1回戦を突破したが、その試合内容に余裕は見られない。第3クォーターにブザービーターを決めた今林萌(宗像高校)が、勢いそのままに第4クォーターのファーストシュートを沈める。残り10分を切った時点で74-73、リードしていたのは福岡大学の方だった。しかし、ようやく目覚めた東海大学が26-8と最終クォーターを圧倒し、2回戦へ駒を進めた。
福岡大学の今村優樹キャプテン(福翔高校)は「やっぱり強かったです」と潔く負けを認める。筑波大学を相手に65-76で敗れた昨年同様、健闘した福岡大学には大きな拍手が送られた。
11年ぶりにインカレ(全日本大学バスケットボール選手権大会)に出場した昨年に続き、2年連続出場を果たすも「経験が大きなカギを握る」と今村は危惧していた。昨年を経験しているのは、今村とともに今林萌(宗像高校)と山田幸多(糸島高校)の3人しかいない。「トップダウンではなく、下級生からも上に意見できるような環境を作り、全員で強くなろう」と積極的にコミュニケーションを取りながら、経験不足を補う強化をしてきた。
「優勝チームでも絶対に隙がある。とにかく思いっきり戦おう」と今村は声をかけ、2度目のインカレのコートに向かう。「常にハードにプレーできるチームを作ってきたつもりです」という自らのスタイルを貫いていく。チャンピオンチームに怯むことなく、「フィジカルに戦うことを常に心がけ、外からのシュートだけにならないように声をかけていました」。佐土原遼(東海大相模高校)や八村阿蓮(明成高校)がマッチアップするところを狙い、「そこからのドライブがずっと生きていました」という作戦が功を奏す。「相手は高校時代の有名選手ばかりだったので、泥臭いところから徹底しよう」とルーズボールに飛び込み、身長や体格で劣る部分をカバーする。「ペリメーター陣が常にオフェンスリバウンドの意識を持ってプレーしたことで、つなげたところもありました」と気迫溢れるプレーで王者に立ち向かって行った。
19点差で敗れたが、立派な戦いだった。しかし今村は、72-73と1点ビハインドで終えた第3クォーターの時点で、チャンピオンチームとの差を痛感している。
「あの1点はやっぱり大きな1点でした。数字上では1点差ですが、その差が九州と関東との差でもあり、最後に離された結果につながりました」
それもまた経験である。今年は今林、山田以外にも、立野友也(福大大濠高校)、青山晃也(小林高校)がコートに立ち、全国大会の空気を吸った。この悔しさを来年への糧とし、福岡大学の新たな伝統につなげていけば良い。