期待の下級生が台頭してきたからこそ、来年も1部で!
「1年生がコートに3人も立つのは、たぶん1部の中でも我々くらいです。でも、経験を積み、すごく成長してきているので戦力になってくれています。けっして、育成として起用しているわけではありません」と幸嶋監督は自信を持ってルーキーたちをコートに送り出す。卒業した工藤卓哉と入れ替わりでやってきた弟の#34 工藤貴哉は要所で3Pシュートを決め、12点。唯一の190cm台である#11 工陸都(192cm)はゴール下で踏ん張り、15点をマーク。白鷗大学戦は無得点に終わったが、先発を任されている#51 横山悠人も存在感を示し、1年生の活躍が光る。また、2年生の #3 小針幸也も10点を挙げ、はじめて小酒部以外に3人が二桁得点を記録した試合でもあった。
頼もしい下級生がいるからこそ、「来年も1部で戦いたい。そのためには上級生がリーダーシップを執っていかねばならないです」と小酒部はチームを牽引する。幸嶋監督も「下級生が良い経験を積んでおり、今年残留できれば来年以降は明るい」と期待を寄せている。そのベースとなるのが「普段の練習で支えてくれている上級生たちです」と続け、チーム一丸となって1部残留に全力を尽くす。
神奈川大学はいわゆる特待生のような制度はなく、「リクルートは弱い」と幸嶋監督も認めている。山北高校出身の小酒部は、全国とは無縁だった。入学当初、3部から2部に昇格したばかりの神奈川大学が、勢いに乗ってそのまま1部昇格を決めた。昨年は2年生エースとして頭角を現す。今年はU22日本代表に選出され、李相佰盃日韓学生バスケットボール競技大会に初出場。3試合ともチームハイの得点力で活躍した。さらに、B代表候補にも名を連ね、トントン拍子で急成長している。
「高校でバスケ部を引退したときは、プレーを続けるかどうかさえ決めていなかったです。たまたま幸嶋さんから声をかけられましたが、神大でやっていけるのかなという不安しかなかったです」という3年前の小酒部とは見違えるほどの位置におり、まさに突然変異である。しかし、自身は「幸嶋さんの指導通りにやっていたら、ここまで来ていたっていう感じです」と言うように、努力の裏付がしっかりとあった。
『小酒部さえ潰せば良い』と、今シーズンの対戦相手から標的にされる。ディフェンスのプレッシャーも強く、マークマンを振り切ってもダブルチームで挟まれる。それでも平均24.7点を挙げる活躍は大きな自信につながっていた。将来はBリーグ入りを目指すとともに、「今年も可能性があれば、特別指定選手として挑戦してみたい」と高い志を持つまでになった。189cmのポイントゲッターが、プロのレベルでどこまで通用するのか早く見てみたい。
急成長するエースに、幸嶋監督も手放しで称えた。
「今は余計な仕事もあり、あれだけ相手に守られながらも、これだけの活躍をしている彼は本当にすごいです。普段はあまり褒めないんですけどね(笑)」
残り4試合+α(入替戦?)、1部リーグに踏み止まるためにも、まだまだ厳しい戦いは続く。
文・写真 泉誠一