吹っ切れたことで覚醒し、20点オーバーを連発
ケガ人が多い中、エースとしてチームを引っ張る活躍を見せる前田だが、リーグ序盤は「下級生を試合に出しながら育てて欲しい」と網野ヘッドコーチに直談判していた。しかし、まわりに気を遣いすぎてしまったことにより、自分自身のプレーを見失っていく。そんな前田に対し、「まずは自分のプレーをやり切って、それに対してまわりを合わせていった方が良い」とアドバイスを送る。前田自身も下級生に託しすぎていたことを反省し、吹っ切れて戦えたのがこの3連戦だった。
「水害もあってリセットすることができ、自分が何をすべきかと網野さんにも言われ、それでやっと気付くことができました。気持ちが変わった面が一番大きいです」という変化はスタッツにも現れている。東海大学戦(16点・14リバウンド)、専修大学戦(24点・13リバウンド)はいずれもダブルダブルを記録し、青山学院大学戦は29点を叩き出した。その前の筑波大学戦でも21点を挙げている。簡単に二桁得点をクリアできる前田だが、過去のリーグ戦を振り返っても20点以上を挙げることはなかった。得点源であるディオップが不在となり、自分自身のプレーに徹したことで覚醒しはじめている。
白鷗大学vs青山学院大学戦は、ワールドカップで露呈した日本の弱点を払拭するようなフィジカルな戦いが繰り広げられ、74-71で白鷗大学が接戦を制する。見応えのある一戦だった。29点を挙げた前田は2人、3人に囲まれようがしっかりバンプし、ステップワークでかわして次々と得点を挙げていく。日本代表キャプテンの篠山竜青(川崎ブレイブサンダース)の言葉は、しっかりとこの世代にも響いている。
「篠山さんも言っていましたが、身体が細いからフィジカルが弱いという話ではなく、身体の当て方というのはあると思います。また、慣れというのもあります。青学は関東の中でも一番フィジカルが強いと言ってもおかしくないですし、そのチームに対しても僕らがフィジカルで負けずに戦えたことは自信になります。日頃から網野さんもフィジカルが重要だと話しています。それは、ただウエイトトレーニングをすれば良いわけではなく、どう身体を当てるかが大事であり、練習中から取り組んでいます。そのおかげでフィジカルは鍛えられたと思います」
ダブルダブルした2戦は、いずれも5本以上のアシストも記録していた。「今は1番(ポイントガード)から4番(パワーフォワード)までこなしながら、臨機応変に対応しています。将来的には1番か2番(スモールフォワード)でプレーしたいですし、それを踏まえて今はオールラウンドにプレーできています」という前田は、厳しい状況下で経験値を上げ、試合を通して成長し続けている。
このリーグ戦での目標はベスト4に設定し、インカレの4つ角シード枠を獲りにいく。現在8勝6敗で7位の白鷗大学だが、他のチームよりも2試合少ない。4位圏内まで2ゲーム差に迫っており、台風によって延期となった試合を通じて巻き返すことは十分可能である。
文・写真 泉誠一