開始4分、10-2とスタートダッシュに成功したのは4連覇を狙う筑波大学の方だった。#32三浦望(4年)は「想定外だった」と振り返り、コート内は混乱していた。白鷗大学に来て3年、ヘッドコーチとして2年目の網野友雄がタイムアウトを取る
「もう一回、自分たちのディフェンスをしよう」
選手たちを落ち着かせ、練習してきたことを思い出させ、再びコートへと送り出す。
本来の姿を取り戻した白鷗大学は第1クォーターを終え、16-18と2点差に迫る。「追いつけたことが全て」と網野ヘッドコーチは言い、ここがターニングポイントになった。第2クォーターは逆に4連続得点から入り、24-20と逆転に成功。その後も得点を重ね、37-28と9点リードして折り返す。後半、筑波大学は#88牧隼利、#11増田啓介、#15森下魁の4年生が奮闘し、3点差まで追い上げる。しかし、白鷗大学の勢いは止まらなかった。66-58でスプリングトーナメント(第68回関東大学バスケットボール選手権大会)を制し、頂点に立つ。白鷗大学にとっては、大学バスケを通じてこれが初のタイトル獲得となった
白鷗大学一丸となって鍛えてきたディフェンス力
昨年のインカレチャンピオンの東海大学を準々決勝(63-58)で破り、準決勝は同準優勝の専修大学(78-69)を乗り越え、最後は2年前の決勝で敗れた筑波大学にリベンジを果たして優勝に輝いた。2年前は57-115で大敗を喫しており、準決勝を先に終えた時点で「やるならば筑波にリベンジしたい」と網野ヘッドコーチは再戦を熱望していた。当時2年生だった#77前田怜緒、#75ディオップ・マムシェッハイブラヒマはその頃から先発を任され、#24星野曹樹(いずれも4年生)もプレータイムを与えられており、2度目の決勝の舞台となる。その経験があるからこそ「さほど心配はしていない」と網野ヘッドコーチは話していた。しかし実際は、「決勝という特別な空気の中で少し受け身になったような出だしになってしまった」とやはり一筋縄ではいかなかった。
2年前、「(筑波大学に)ボコボコにされているのを応援席で見て、すごく悔しい思いをしました」という三浦は、待ち焦がれた自身初の決勝の舞台に先発で起用される。「我慢強くプレーしていれば必ず流れは来る」と積み上げてきたスタイルを信じ、「逆転勝ちできたことですごく自信になりました」と成長につなげることができた。「オフェンスよりもディフェンスが自分の役目」という三浦をはじめ、爆発的なディフェンス力が白鷗大学の強みである。
網野ヘッドコーチは、「練習中から一つひとつのプレーの細部にまでこだわって取り組んできた」。U22日本代表のコーチとして留守にしていた期間は、女子チームの佐藤謙介アシスタントコーチが協力し、白鷗大学一丸となって目指すべきスタイルを注入していく。「関東の中でもフィジカルは弱い方」だと三浦は自負する。「それでも体を張るしかない」と勇気を持ってバンプしたことでチャンスを広げていった。今大会6本(全体3位)のスティールを成功させ、決勝戦でも3本を決めた三浦の手を使ったうまいディフェンスにも目を奪われる。「ウロウロしてることが多いですが(笑)、常にスティールは狙っています。ディフェンスで貢献したいという気持ちがそういうところで出たのかもしれません」と話すとともに、映像を使ってライバルチームを研究してきたことが結果に結びついた。