4連覇を狙う筑波大学は選手層が厚い。「日頃の練習から試合のようにバチバチできることがすごく楽しいです」という中田嵩基は、3年生の菅原暉と野本大智から少しでもプレータイムを勝ち獲るために挑む日々が成長につながっている。「先輩方に意見を言っても嫌な顔をせずに受け入れてくれるし、逆にアドバイスしてくれる方たちです」という環境は「すごくやりやすい」と土家と同じ感想だった。
春休み時期からチームに合流しているとはいえ、練習に参加してから2ヶ月程度。短期間でもすでにポイントガードとしてチームを引っ張る姿に頼もしさを感じる。あの日、敗れた悔しさをしっかりと糧にしていた。
恩師・田中國明先生への思いを胸に──
大事な試合で足が痙ってしまった中田は、「大学ではプレータイムに関係なく全てを出していきたい。日頃からモチベーションを高め、常に1日1日をどう過ごすかが試合の結果にもつながると思っています」と準備を怠らない。土家も「あそこで負けて(ウインターカップに)出られなかったからこそ、それをモチベーションに毎日がんばることができています。全てはあの日のことを忘れずに、大学でもがんばっていきます」と前を向いた。
恩師の田中國明先生がこの世を去ってから1年が経った。「田中先生のことを思って日々練習することもできています」と言葉を続けた土家は、あの日負けた悔しさがあるからこそ、恩師の言葉がさらに深く刻み込まれている。筑波大学での中田の背番号は「田中國明先生の“クニ”から92番です。あの試合を忘れないようにという意味合いを込め、田中先生がずっと見守っていると思ってハードワークしていきます」と心に誓った。
現在、ルーキーとして初の公式戦となるスプリングトーナメント(第68回関東大学バスケットボール選手権大会)に臨んでいる。高校と大学の違いについて中田はフィジカルの差を、土家はそれに加えて試合中の修正能力を挙げた。高校ではトップクラスのガードコンビも、一つひとつ新たな経験を積んでいる最中だ。大学界だけではなく、Bリーグにも福岡大学附属大濠高校出身のOBは多く、名門校としての揺るがぬ証拠でもある。ウインターカップを逃した彼らだが、そのブランドが色褪せることはない。いや、あの悔しさがあるからこそ、鬱憤を晴らすように大学バスケでさらに成長していくことに期待したい。
文・写真 バスケットボールスピリッツ編集部