関東大学女子リーグ1部昇格を決めたばかりの桐蔭横浜大学は、その勢いに乗ったままインカレでも初出場ながらベスト8入りを果たした。初戦は北海道1位の北翔大学に69-66と競り勝ち、2回戦は優勝経験もある関西1位の大阪体育大学を76-64で破って勝ち上がる。
迎えた3戦目の準々決勝は、第1シードの早稲田大学にアップセットした筑波大学と対戦。序盤からどんどんゴールへアタックしていった桐蔭横浜大学が、30-29と前半はリードして終えた。しかし第3クォーター、筑波大学に7連続ポイントを許し、あっという間に逆転され、10点差まで引き離される。関東1部の強豪校だけに流れをつかんだ瞬間から一気にディフェンスの強度を上げていく。終わってみれば57-73と16点差で敗れ、ベスト4進出を阻まれた。
インカレ初出場校であり、今シーズンは関東2部で戦ってきた桐蔭横浜大学にとっては、この結果もポジティブな部分を強調して評価もできる。だが、試合後のミーティングでの木村和宏ヘッドコーチの第一声は違った。
「なんかモヤモヤする結果じゃないか? なぜ完全燃焼しない!? ミスしてもいいんだって。思いっきり自分たちのプレーをやり切ろう」
関東1部の筑波大学戦で浮き彫りになった体力の差、気力の差
筑波大学との差について、「3日間戦う準備ができていない。土日の戦い方は知ってますが、これまでインカレの舞台に立ったことがなく、まだまだ未熟なプレーヤーであり、3日間力を出し切ることを継続できませんでした」と指摘する。木村ヘッドコーチのスタイルとして5人全員を交代しながらタイムシェアしたが、終盤に引き離されたのもその差が浮き彫りになった。気持ちの部分でも「相手は優勝する気で来ています。我々も優勝を目標と言ってはいましたが、心の底からそう思っているかという点では相手とはその思いの強さが全く違いました」と見えない壁に阻まれた。
キャプテン#11尾﨑早弥子選手(4年)は「筑波の背中が見えていながら、力を出し切れずに負けてしまったので、とにかく悔しい思いが強いです」と少なからず手応えを感じながら戦えていた。木村ヘッドコーチか指摘する全力を出し切れなかった原因については、「誰にでもできることを誰よりもやらないと勝てないチームなのに、どこかで油断がありました。自分たちならばできるというのが慢心になってしまったことで、追いつけなかったんだと思います」。
桐蔭横浜大学の選手たちは自らを「雑草軍団」と呼ぶ。インカレにはじめて出場し、2回戦を突破したことは自信になった。だが、一つひとつのプレーを丁寧に、いつでもボールに食らいついていく姿勢がほんの少しの慢心のせいで、大事な局面に本来の姿を出せなかった。「本当はベスト4に入りたかった」と尾﨑選手は悔しがり、そこにたどり着けるだけのパフォーマンスを前半は見せていただけに残念な結果となってしまった。
気落ちを切り替え、全国の強豪相手に完全燃焼するだけ
幸いベスト8入りすれば、負けても順位決定戦へまわり、最終日まで試合は続く。来年1部で戦う選手たちにとっては、自分たちのレベルを全国区の強豪相手に測っていかなければならない。リーグ入替戦の日本体育大学戦で23点を挙げたシューター#22米谷帆芽選手(3年)は、筑波大学を相手に2点しか決められなかった。「自分のやりたいことを何もやらせてもらえませんでした。リーグ戦とは全く違う内容になってしまいました」と1部との差を痛感させられた。
しかし、来年に向けて自分がこのチームを引っ張っていかなければならないことも自覚している。「インカレで戦える機会を無駄にしないように、残る2試合も積極的に戦っていきます」と気持ちを切り替えて完全燃焼するだけだ。
以前は日本体育大学の男女バスケ部を率い、優勝経験もある木村ヘッドコーチが桐蔭横浜大学を率いて今年で11年目を迎えた。「長いよね」と言うが、ゼロから環境整備をしながらインカレの舞台にたどり着いた道のりを振り返ればあっという間だったかもしれない。土台を築き、1部昇格が決まっているからこそ「真価が問われるのは来年」と木村ヘッドコーチは警鐘を鳴らす。インカレはその土台を踏み固める場であり、尾﨑キャプテンも残り少ない時間を後輩たちのために全力を尽くす。
「自分自身も1部でプレーしたかったですが、後輩たちに助けられてここまで来られましたし、私たち4年生がインカレに連れてきてもらったと思っています。この試合で筑波の背中が見えているのも分かったし、ベスト8にも入れたことも自信につながっています。このチームの誇りや自分たちの可能性を、残りの2試合でさらに強固なものにできるよう手助けしたいです」
全日本バスケットボール連盟
男女決勝戦はBSフジにて生中継
文・写真 泉 誠一